小野田寛郎 大正11年(1922年)3月19日 – 平成26年(2014年)1月16日
引用文は小野田氏著書『たった一人の30年戦争』からの引用です。
小野田寛郎は帝国陸軍中野学校出身者で、フィリピンでのゲリラ戦を命じられ、本国降伏後も30年近くに亘ってゲリラ戦を継続されました。最終的には元上官の任務解除命令を受けて帰国しています。
大東亜戦争の激戦地では逃亡兵も多く出ましたが、小野田少尉は全く逆で、戦闘を継続していました。引用文にあるように、小野田少尉は本国がアメリカに占領されていることを知っておられましたが、戦後日本政府はアメリカの傀儡政権であり、真の亡命政権がどこかにあることを信じて戦い続けたのです。同書引用箇所には「しかし、本当の日本政府は満州のどこかに存在しているはずだった」と続けられています。
小野田氏は帰国後著作を発表したり、講演を頼まれることもありました。私(本山)も学生のころ、小野田少尉が福岡に来られ講演されたのを聴いています。そのとき小野田少尉は、「いまでも日本政府はアメリカの傀儡だと思っている」という主旨のことを述べられ、会場の喝采を集めていました。その言葉は私にとって、雷のごとき衝撃でした。
小野田少尉の戦いは現地フィリピンの大統領からも称賛され、世界中の尊敬を集めています。晩年はキャンプを通じて子供たちを育てる自然塾を運営し、教育界に対しても貢献されました。
前掲書の巻末にはこのような文も見えます。
戦後、日本人は「命を惜しまなければいけない」時代になった。何かを”命がけ”でやることを否定してしまった。覚悟をしないで生きられる時代は、いい時代である。だが、死を意識しないことで、日本人は「生きる」ことをおろそかにしてしまってはいないだろうか。
小野田少尉のご冥福を心よりお祈り申し上げます。
(文責 本山貴春)