なぜ北朝鮮に拉致された国民を救えないのか 日本政治に欠けているもの

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平成29年9月24日、福岡県大野城市で歌手の高千穂ひろみさんらによる九州豪雨災害復興支援チャリティーコンサートが開催された。

その中で、拉致被害者である横田めぐみさんのことを歌った『逢いたい…』という曲も熱唱し、めぐみさんの母・早紀江さんから高千穂ひろみさんへ送られてきた手紙の内容も披露された。

手紙の中で早紀江さんは、「長年救出運動をやってきましたが、もう限界です」などと心情を吐露していたという。高千穂ひろみさんは、「拉致被害者の人たちは本当にかわいそう。早く帰って来られますように」と早期救出を訴えた。

横田めぐみさんが北朝鮮の工作員に拉致されたのは昭和52年(1977年)、13歳のときだった。今年の11月15日で丸40年になる。その間、めぐみさんのご両親は全国を駆けずり回り、時には渡米して、拉致被害者救出を訴えてきた。

平成9年(1997年)には拉致被害者家族会が結成され、今年で丸20年。平成18年(2006年)の第一次安倍内閣で政府拉致対策本部が設置され、拉致担当大臣は10年間で16回も交代した。

民間団体である拉致被害者を救う会などを中心に集められた、拉致被害者救出を求める署名は1000万筆を超えている。第二次安倍内閣においても、拉致問題解決は最優先課題とされてきた。それでもなぜ、拉致被害者は帰ってこないのか。

それどころか、北朝鮮においては拉致犯罪の首謀者である金正日が天寿を全うし、独裁権力が金正恩に継承され、ミサイル発射や核実験をエスカレートさせている。北朝鮮はいつでも日本の都市を核攻撃できるようになった。

対北朝鮮政策において、拉致とミサイル、どちらを優先すべきか、という議論も見られるが、その2つは通底していると考えなければならない。

北朝鮮は核とミサイルによって周辺国を威嚇し、戦争を煽っている。そもそも北朝鮮と韓国の朝鮮戦争は昭和28年(1953年)から休戦しているだけで、両国は一貫して戦争状態にある。

北朝鮮にとって韓国・米国・日本は敵国だ。北朝鮮は休戦下にあっても様々な工作活動を通じて敵国への「勝利」を目指してきた。工作員を育成するために日本人を拉致し、そこで育成された工作員を日本や韓国に送り込んだ。

そして様々な技術を盗み、ミサイル開発や核開発を実行してきた。これらは全て戦争準備であり、戦争の一貫に他ならない。

ところが日本側には、北朝鮮と戦争をしている自覚が全くなかった。北朝鮮が日本人を拉致した目的を考えず、「平和的な交渉」で取り戻そうとしてきた。それどころか、拉致事件そのものを矮小化し、無かったことにしようとしてきたのだ。

特に日本外務省は「日朝国交正常化」という外交的成果を欲し、拉致問題を邪魔者扱いしてきた。わが国の政治課題からかろうじて「拉致」が消えなかったのは、ひとえに国民の「かわいそう」という世論があったからだ。

しかしこれからは「かわいそう」だけでは、拉致被害者は帰ってこない。トランプ政権は今年の11月にも北朝鮮を武力攻撃し、金正恩体制を転覆させるという情報もある。その時、わが国が主体的に拉致被害者救出に動けるかどうかが問われている。

北朝鮮による拉致は、日本国民に対する現在進行形の侵略戦争なのだ。

本山貴春(もとやま・たかはる)独立社PR,LLC代表。北朝鮮に拉致された日本人を救出する福岡の会副代表。福岡市議選で日本初のネット選挙を敢行して話題になる。大手CATV、NPO、ITベンチャーなどを経て起業。

本山貴春

(もとやま・たかはる)選報日本編集主幹。北朝鮮に拉致された日本人を救出する福岡の会事務局長。福岡大法学部卒(法学士)。CATV会社員を経て、平成23年に福岡市議選へ無所属で立候補するも落選(1,901票)。その際、日本初のネット選挙運動を展開して書類送検され、不起訴=無罪となった。平成29年、PR会社を起業設立。著作『日本独立論:われらはいかにして戦うべきか?』『恋闕のシンギュラリティ』『水戸黄門時空漫遊記』(いずれもAmazon kindle)。

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