ウイグル地方議員の会が異例の「提言書」公開

人権
この記事は約3分で読めます。

令和3年6月10日、ウイグルを応援する全国地方議員の会(丸山治章会長)は評論家の三浦小太郎氏との共著による「提言書」をウェブ上に公開した。

提言書のタイトルには『ウイグル活動において留意すべき問題についての提言』とあり、PDFファイルで22ページに及ぶ。特定の民族を支援する運動に関してこのような文書が公開されることは極めて異例。

その内容は、日本におけるウイグル運動がNPO法人日本ウイグル協会に一本化された経緯と、これまでに生じたトラブルについて詳述するもの。ウイグル支援に前向きな国会議員や地方議員、さらに増加しつつある一般支援者への情報共有を目的としている。

トゥール・ムハメット氏

地方議員の会が提言書の中で特に強調しているのが、在日ウイグル人活動家として知られるトゥール・ムハメット氏に関する問題だ。現在「日本ウイグル連盟」の会長を名乗るトゥール氏は、一時は在日ウイグル人を代表する地位にあったという。

ところが、トゥール氏は自らの立場を利用して意見の異なる在日ウイグル人を「スパイ認定」し、著名な言論人である櫻井よしこ氏や世界ウイグル会議のラビア・カーディル総裁(当時)に報告。スパイ認定は後に虚偽と判明し、櫻井氏は謝罪に追い込まれている。

それらトゥール氏の行動は在日ウイグル運動における自身の権力基盤を強化するために行われたと見られているが、運動全体にとっては損失が大きく、却ってトゥール氏が在日ウイグル人コミュニティの中で孤立する要因となった。

ウイグル運動を妨害?

孤立を深めるトゥール氏はデモ行進の現場で他のウイグル人と口論になり、暴力事件を引き起こすに至る。

さらに、米国在住のラビア・カーディル氏来日に際し、当時ラビア氏の代理人(ラビア・カーディル日本代表)を名乗りながらビザ発給阻止を画策するなど、ウイグル運動を妨害するかのような行動をとっていたことが明らかにされている。

この時の工作が原因となり、ラビア氏から「日本代表」を解任され、在日ウイグル運動におけるトゥール氏の権威失墜は決定的となった。

日本ウイグル連盟の実態とは?

トゥール氏が引き起こした様々なトラブルは在日ウイグル人及びウイグル運動を支援する少数の日本人の間でのみ共有され、「結果的に現場で緘口令がひかれるような構造になっていた」(提言書)という。

そもそも中国におけるウイグル問題の実態が日本国内で知られていない段階において、一部のウイグル人によるトラブルを公言することは、「ウイグル運動全体にとってマイナスしかない」と判断されたためだ。

しかし近年、トランプ政権の「ジェノサイド認定」、日本の国会における対中制裁法制化や国会決議採択の動きもあり、急速にウイグル運動への関心が高まっている。

自らの行いによって孤立していたトゥール氏は、ここでにわかに活動を活発化させ、事実上の「一人団体」である日本ウイグル連盟が日本ウイグル協会と同等であると主張し始めた。

トゥール氏は自身を支持する一部の日本人に対して「連盟には多くのウイグル人会員が存在するが公表しない。入会には厳格な審査がある。日本人は会員になれない」などと苦しい説明を行なっている。つまり実態は依然として不明だ。

三浦小太郎氏「一本化が必要」

「提言書」の共著者であり、日本におけるウイグル運動を古くから支援し、評論家としても著名な三浦小太郎氏は、「日本におけるウイグル運動に混乱と停滞の時期があった」ことを認めている。

その上で、「様々なウイグル人団体が別個に交渉することで活動が混乱することを防ぐために(中略)議員連盟の交渉窓口は日本ウイグル協会に統一することとし」たと明記。

これによって「国会議員連盟」「地方議員の会」「ウイグル協会」の三者が、日本におけるウイグル運動を協力して推進していくことが示された形だ。

コメント

タイトルとURLをコピーしました