この度の美洲座旗揚げ公演『アフロディーテ 三島由紀夫物語』上演に際し、多数の皆さまにご来場頂くと共に、過分なるご祝辞を賜り誠に有難うございました。劇団員一同に代わりまして心より御礼申し上げます。
このコロナ禍の中、しかも無名の劇団の旗揚げ公演。いったい何名のお客様に来ていただけるものかと思っていたのですが、結果はこちらの予想を大きく上回るもので、嬉しさを通り越して恐ろしささえ覚えました。
それにしても、今回の舞台、題材が三島由紀夫でなければ、これだけの反響は呼んでいないと思います。あの衝撃的な死より50年、人々の目が再びこの日本が誇る天才に向かいつつある。
それは同時に、彼の提起した問題、日本人であるとはどのようなことか、日本の文化とは何かといったものが、社会情勢が大きく変わろうとしている今に至っても、いまだ未解決のままであるということことなのでしょう。
今回の芝居は三島由紀夫の青年時代を扱いました。そして音楽はある種の格式と雅を与えるため、バッハやシューベルト、ブラームス、メンデルスゾーンといったクラシック音楽から採りました。
そして、意図した訳ではありませんが、作り上げてみればそれぞれの作曲家の20~30代の頃の音楽を使っていました。自分たちで作り上げておきながらなのですが、改めてこの芝居は青春の劇であったのだなと思います。
このような中で輝いたのは、やはり演劇・声優学校の学生諸君で、彼らの粗削りであっても、岩間から迸り、太陽の光に当たって煌めきながら流れる清新な水しぶきのような演技・朗読は、この作品に大きな魅力を与えてくれました。
「仮面劇+朗読劇」という、あまり例のない形式で上演した今作ですが、新たな発見が多くあったと共に新たな課題にも多く気付かされました。それは次回の公演までの宿題としなければならないと思っています。
『三島由紀夫物語』は三部作で企画しています。次作は小説家として栄光の絶頂に包まれながら、戦後日本の価値観にどうしても馴染むことができず、いわば、栄光への墜落といった精神状態となっていく三島由紀夫の苦悩する魂を、当時の社会風俗や政治状況を織り交ぜながら表現していくつもりです。
今回の演劇では多くのお褒めの言葉を頂きましたが、決してこれに甘えることも慢心する事も無く、再び一から丹念に作品を作り上げていこうと思っております。
▽美洲座は本作のDVD発売にあたり、先行予約の受付を開始しました。詳細は公式サイトをご確認ください。
美洲座公式サイト:mishimaza.net
最後にちょっとした音楽クイズです。(A)~(C)の肖像画は、今回舞台で用いた音楽の作曲者達の若き日の姿です。誰か分かりますか?
いずれも学校の音楽室に飾られている有名な肖像画とはずいぶん雰囲気が違います。しかし、今回使用した音楽に関しては、こちらの絵のイメージの方が私にはしっくりきます。
正解は
(A)シューベルト (B)メンデルスゾーン (C)ブラームス
です。いずれも美形ですが、特にメンデルスゾーンなど少女漫画の主人公そのものですね。
石原龍司(いしはら・りゅうじ)令和2年、「市民劇団 美洲座」を設立し、座長に就任。