北朝鮮拉致「イギリスが領土を取り返したように」/参加者の声

前回に引き続き、救う会福岡の参加者にインタビューを行った。

福田さんは、毎月の署名活動に往復2時間以上かけて通っている。とても穏やかな人で、街頭でマイクを持っても訥々と通行人に語りかけるように話すのが印象的だ。

今回のインタビューでも、慎重に言葉を選びながら、決して激する様子もなく静かに語っておられた。それだけに、拉致被害者救出への熱い思いが伝わって来た。

北朝鮮に拉致された日本人を救出する福岡の会
幹事・福田修一(ふくだ・しゅういち)さんインタビュー
聞き手:フリーライター 菟乃元(うの・はじめ)

Q.福田さんは救う会で活動されてどれくらいになりますか?

まだ6年ですね。

Q.救出運動に参加されるようになったきっかけは何でしょう?

会社を早期定年退職したことです。母の介護があったので早期定年退職せざるを得なかったんですよ。

拉致問題を知ったのは20年くらい前で、テレビで北朝鮮工作員の証言を聞いて、「本当にこういうことがすぐ近くで起きているんだ」と驚きました。

Q.拉致被害者5名が帰ってきた頃(平成14年)ですか?

その数年前だったと思います。

拉致に関するニュースがテレビで流れると、「自分は平和に暮らしているのに申し訳ないなあ」という気持ちになっていました。

仕事で忙しいことを、拉致被害者のために何もできないことの言い訳にしていました。

母の介護をきっかけに離職することになって、初めて自分の時間も取れるようになったので、天神での署名活動に来るようになったというわけです。

Q.ニュースで拉致問題に興味を持たれて、いつか時間ができれば参加したいと?

とにかく被害者やその家族に対して「申し訳ない」という気持ちが強かったんです。同じ日本国民なのに、「仕事が忙しいというのは贅沢な悩みだな」と。

会社でそういう話を少しでもすると、同僚から不思議な目で見られましたね。いま振り返れば、「変わったやつだな」と、思われたと思います。

Q.実際に活動する中で、拉致問題が進まない現状について思うことは?

ずっと前から考えていたことがあります。

1982年に南大西洋の英領フォークランド諸島にアルゼンチンが侵攻して、イギリスが空母を派遣したり、アメリカに応援を求めたりして、紛争(※)になったことがありました。

フォークランド紛争(Falklands War)
大西洋の英領フォークランド諸島の領有を巡り、1982年3月からイギリスとアルゼンチン間で3ヶ月に及んだ紛争のこと。(Wikipedia)

フォークランド紛争

いまだに強い印象が残っているんですが、イギリス王室のアンドルー王子(※)という方がヘリコプター部隊でフォークランド諸島の前線に赴いたんですよ。

アンドルー王子(Prince Andrew)=ヨーク公爵
エリザベス2世女王の第3子。1979年に英海軍に入隊し、ヘリコプターのパイロットになった。イギリス王位継承順位第8位。

アンドルー王子はエリザベス女王のご子息ですが、その方をイギリス政府は後方部隊に引っ込めようとしたそうです。しかしエリザベス女王が反対された。「王子であっても、同じイギリス国民だ」と。

アンドルー王子

それはたいへん立派なお考えだったと、当時もいまも思っています。

その話と拉致問題を一緒に考えるのは無理があるとは思うんですけど、国土を取られるのだけが侵略では決してなくて、国民を無理矢理さらうのも大変な侵略行為だと思います。

それには違う考えの方もおられると思いますけど、私はそういう考えです。

アンドルー王子が命をかけてイギリス国土を守るために、一般国民である兵隊さんと同じように前線に赴く。これは気高く立派なお考えだな、と思ってきました。

一方で、日本では国民が無理矢理連れ去られて、その経緯もはっきりしているのに、40年経って帰国できたのは5名だけという状況に、理不尽さを超えて表現のしようもない気持ちです。

中国に抜かれたとはいえ、G7に名を連ねる経済大国の日本です。それなのに、すぐ近くの国で883名もの方々が、このような状況に置かれて、あと何十年こんなことを続けるのかと。

武力に訴えることが最善の策とは思いませんけど、これだけの時間が経過しているわけです。

「他国と情報を共有して関係を密にして取り返す」ということを未だに繰り返し言っておられる方々に、「関係」で取り返せるなら、拉致被害者はとっくに帰って来られているはずだと言いたいです。

Q.その他、日本政府や政治家に対して思うことはありますか?

今日も街頭署名活動をしていて、「拉致問題がテレビや新聞で取り上げられることが少なくなってきた」と何人もの方から異口同音に言われました。

街頭で署名を呼びかける福田さん(福岡市天神)

ここまで来たら、短期間で集中的に国内外へ日本政府が情報発信して、今までと違う方法で、具体的に拉致被害者を助け出す、ということを考えないといけないと思います。というよりも、20年前にそうしておくべきだったんです。

これは「乱暴な発言」と捉えられるかも知れないんですけど、拉致された国民が1人であろうと、千何百人であろうと、状況的に北朝鮮に捕えられていることが明らかであれば、イギリスが領土を取り返したように、正々堂々と取り返す、その覚悟が大事ではないかと。

具体的には自衛隊の方にその白羽の矢が立つと思います。もちろん自衛官にも家族があり、生活がありますから、実際に戦わないといけないような状況は望みません。

しかし、拉致されて40年以上経っているということを考えれば、国内外に「やむをえず日本としてはこういう方向に進む」と発信すべきです。

米国の空母が近づいただけで、北朝鮮が米国との交渉のテーブルに着いた、という過去の経緯も実際にあります。

私は、血を流すことは絶対避けたいと思います。

しかしそこまでの覚悟を持って発信をしていかなければ。拉致被害者の親世代も高齢化していますし、時間は全くないんです。

これまでも、何人もの拉致問題担当大臣が「もう一刻の猶予もない」と言っておられますけど、その言葉の意味をもういっぺん政治家の方々に勉強していただきたい。「一刻の猶予もない」というのがどれだけ重い言葉なのかと。

Q.もう少し具体的に、どうやって救出すべきでしょう?

適切な例ではないと思いますが、いま香港で大規模なデモ活動が続いて、中国軍が付近に大規模な戦闘部隊を集結させ、デモ参加者を威嚇していますよね。

日本としても、重火器などの装備を含め自衛隊の部隊を集結させ、「やむをえずそうしている」と海外に発信することだと思います。

もちろん実際に血を流すことは国民も望んでいませんので、そこから先は慎重にすべきでしょう。政治家が民意をまとめていくことが重要です。

それくらいの覚悟を示した情報発信をしないと、何も変わらないのではないかと。

それを「挑発行為である」と非難されることもあるかも知れません。しかし、どこかの国に攻めていくことが目的なのではなくて、国民をもう何十年も取り返せてないわけですから。

とっくの昔に、それくらいはやっておいて然るべきだったと思います。


この記事は、拉致問題専門サイト「Blue Ribbon Force」から転載しました。

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