埼玉・吉川市の市議がビラでブルーリボンバッジを揶揄「撤回しない」

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埼玉・吉川市議会会派「市民の会・無所属」が作成した議会報告ビラにおいて、「お金をばら撒く政治家」のイラストに拉致被害者救出を願うブルーリボンバッジが書き込まれていた問題で、発行責任者である降旗聡(ふりはた・さとし)市議へ抗議の声が殺到している。

イラストは無料素材サイト「いらすとや」で配布されているものだが、そこにはブルーリボンバッジは描かれていない。議会報告ビラを作成する際に意図的に描き込まれた。

降旗聡市議は取材に対してイラスト掲載の責任が自身にあることを認めた上で、「イラストを撤回することも謝罪もしない」と明言した。

問題の議会報告(表面)

問題の議会報告(裏面)

イラストの素材にはブルーリボンはない(いらすとや)

ブルーリボンバッジとは

政府拉致対策本部の公式サイトには、ブルーリボンについて次のような説明文が掲載されている。

拉致被害者の救出を求める国民運動は、ブルーリボンと青色を運動のシンボルにしています。/青色は、被害者の祖国日本と北朝鮮を隔てる「日本海の青」を、また、被害者と御家族を唯一結んでいる「青い空」をイメージしています。

ブルーリボンバッジは、民間団体である救う会(北朝鮮に拉致された日本人を救出するための全国協議会)関係者や、家族会(北朝鮮による拉致被害者家族連絡会)、拉致議連(北朝鮮に拉致された日本人を早期に救出するために行動する議員連盟)所属議員が着用している他、それら組織に参加していない者も、拉致被害者の早期帰国を求める意思表示として着用できる。

安倍首相も常にブルーリボンバッジを着用

平成30年4月には兵庫県が全職員約5800人にブルーリボンバッジを配布。多くの職員が自由意志で着用して業務している。平成29年末には秋田県の北都銀行が「北朝鮮人権侵害問題啓発週間」に合わせて窓口担当の職員に着用させた。

ブルーリボンバッジは救う会の他にも調査会(特定失踪者問題調査会)など、複数の拉致問題に取り組む民間団体が製作・頒布している。集会で手作りのブルーリボンが無料で配布された事例もある。

批判が殺到するも撤回を拒否

今回の吉川市議会会派「市民の会・無所属」議会報告ビラ問題を指摘した、戸田かおる市議(同議会「未来会議よしかわ」会派代表)は、このイラストは日頃からブルーリボンバッジを着用している中原恵人(なかはら・しげと)吉川市長をイメージさせるためのものであると推定している。

署名活動を呼びかける中原恵人・吉川市長

戸田市議は自身のSNSで

拉致被害者の一刻も早い救出を願い、活動を続ける市長の象徴として、「ブルーリボン」がわざわざ描き出され、誹謗中傷の的として「ブルーリボン」を利用した行為を、市民のみなさまどのように感じられているでしょうか。

と述べる。

戸田市議の発信は波紋を呼び、抗議の声は吉川市役所や議会報告ビラの発行責任者である降旗聡市議に寄せられた。

毎月福岡市で拉致被害者の救出を求める街頭署名活動に参加している岡田律子さんは、降旗市議本人と約一時間にわたって電話で話した。

岡田さんによると、降旗議員はイラストが中原市長をイメージさせるものであることを否定し、「人物イラストの胸にあるのはブルーリボンバッジではない」と述べ、ビラ配布を中止する考えもないことを示したという。

今回のイラストが「ブルーリボンバッジを着けて拉致被害者を救う活動をしている人に対する悪質な嫌がらせ」であることを再三指摘するも、降旗市議は

「ですからブルーリボンバッジじゃないです。あの絵は、見方、捉え方の違いです。まぁ、私からしたら人は色々な見方、捉え方があるんだなと…。」

などと開き直った。降旗市議の態度は不誠実で、極めて悪質だ。

問われる社民党の拉致問題への姿勢

降旗市議は今回の一件で抗議の声が多数寄せられていることを認めている。当選回数は2回で、過去に社民党埼玉県連の推薦を受けていた。現在も、社民党埼玉県連の公式サイトに氏名が掲載されている。

降旗聡市議と福島みずほ社民党副党首

また、過去の選挙において福島みずほ社民党副党首(参院議員)が来援していたことも確認されている。

社民党は、平成8年の村山富市内閣の総辞職に伴い、日本社会党から名称変更したもので、現在の所属国会議員は衆参合わせて4名。平成31年1月には、参院で立憲民主党と統一会派を結成している。

日本社会党はかつて朝鮮労働党(北朝鮮の社会主義独裁政党)と友党関係を結んでおり、日本国内で北朝鮮による日本人拉致疑惑が報道され始めても

「北朝鮮が日本人を拉致したというのは一部団体による捏造」

という公式見解を発表し、救う会や家族会関係者との面会も拒否していた。しかし後に北朝鮮の独裁者・金正日が自ら拉致を認めたことで、社民党は拉致問題に関する間違った見解について平成14年にようやく謝罪・撤回している。

今回、社民党に所属する地方議員が、ブルーリボンバッジを揶揄するイラストを議会報告ビラに掲載したことで、同党の拉致問題に関する見解と取り組みが改めて問われる。

社民党の下部組織「平和運動センター」で講演する降旗市議

本件について社民党に質問メールを送ったが、現時点で反応はない。

市民の税金で拉致救出運動を誹謗中傷

地方議員は、地方自治法の定めにより議員報酬の他に「政務活動費」の支給を受けることができる。

実際には地方議会ごとに定められるもので、議員活動に必要な書籍等の購入費用、議員研修会に参加するための費用、視察の費用、事務所経費の他、議会活動の内容を住民に周知するためのビラ作成費用にも充てている。

吉川市議会会派「市民の会・無所属」が作成した議会報告ビラについても、税金を財源とする「政務活動費」が支出される可能性が高い。市民の税金によって拉致被害者救出運動を誹謗中傷することになるため、同市議会事務局に対しても抗議の声が寄せられている。

議会事務局は取材に対し、

「ビラの内容については議会事務局として事前にチェックすることは難しい。内容については会派に責任を持ってもらうしかない」

と答えた。

公選法にも違反か

問題の舞台となった吉川市では今月(平成31年2月)、市長選挙が行われる。また、来年の1月には市議会も改選を迎える。

今回の誹謗中傷ビラが作られた背景には、市長と対立する会派が選挙戦で自陣営を有利にする意図があったことは明白だ。

しかし税金で制作するビラに特定候補者を中傷する内容が掲載されることは違法であり、そのような意図を持ったビラを選挙前に配布することも公職選挙法に抵触する可能性がある。

ましてや、平成18年に国会で成立した「拉致問題その他北朝鮮当局による人権侵害問題への対処に関する法律」では、第3条に地方自治体の義務を明記している。

第三条 地方公共団体は、国と連携を図りつつ、拉致問題その他北朝鮮当局による人権侵害問題に関する国民世論の啓発を図るよう努めるものとする

吉川市の降旗聡市議による行為は、このような法律上の義務にも逆行するものであると言わざるを得ない。

本山貴春(もとやま・たかはる)独立社PR,LLC代表。北朝鮮に拉致された日本人を救出する福岡の会副代表。福岡市議選で日本初のネット選挙を敢行して話題になる。大手CATV、NPO、ITベンチャーなどを経て起業。

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本山貴春

(もとやま・たかはる)選報日本編集主幹。北朝鮮に拉致された日本人を救出する福岡の会事務局長。福岡大法学部卒(法学士)。CATV会社員を経て、平成23年に福岡市議選へ無所属で立候補するも落選(1,901票)。その際、日本初のネット選挙運動を展開して書類送検され、不起訴=無罪となった。平成29年、PR会社を起業設立。著作『日本独立論:われらはいかにして戦うべきか?』『恋闕のシンギュラリティ』『水戸黄門時空漫遊記』(いずれもAmazon kindle)。

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