米国のトランプ支持者が朝鮮半島の「南北和解」に沸き立つ理由とは

世界的にめまぐるしい政治的激動の続く今日この頃。

安全保障を日米同盟に依存している日本人には、様々な問題の解決を急ぐ前に警告しておきたい「日米間のねじれ」があるので、今回はそれを紹介したい。

そのねじれが何であるか結論から述べよう。保守系思想を基本とする米国国内のトランプ支持層と意見の合う味方は本来日本では保守層であるのだが、現実はと言えば、彼らは日本国内の左派勢力と見解が一致してしまっているというものだ。

それが顕著に現れたのは、先月行われた米国によるシリア攻撃と南北首脳会談だ。一つずつ、どういう状況であったか、解説していこう。

「シリア攻撃」でトランプに裏切られた?

まず、米国のトランプ支持層はシリア攻撃に対して「発狂」した。その具合をメディアがしっかりと報道している。

▽トランプ支持者達がシリア攻撃の決定を激しく非難(ポリティコ)
www.politico.com

▽シリアに対して攻撃を浴びせる決定をトランプ支持者達が酷評(ザ・ヒル)
thehill.com

▽トランプ支持者達がシリア攻撃の決定を非難(AOL)
www.aol.com
 
▽シリア攻撃は孤立主義の約束を傷付けるとして、有名なトランプ支持者達が、疑い深くなり、確信が持てず、吐き気がする程の「失望」状態に(フォーチュン)
fortune.com

▽シリア攻撃の決定を受けて、トランプ支持者達の気が動転(ニューヨーク・ポスト)
nypost.com

因みに「メディア・バイアス/ファクト・チェック」(mediabiasfactcheck.com)サイトによると、ポリティコは中道左派、ザ・ヒルは中道左派、AOLは中道左派、フォーチュンは中道右派、ニューヨーク・ポストは中道右派である。(アメリカにおける「中道」が本当の意味で中道なのかは、社会の空気が日本のように左寄りなので、ハッキリしない。)

なぜトランプ支持層がシリア攻撃を非難するのかというと、

「干渉主義否定で反グローバリストのトランプを信じていたのに裏切られた」
「トランプもブッシュと同じだ」

という考え方をしているからだ。

日本、とりわけ保守側からすると、トランプ大統領は東アジア情勢に関して、米国の弱体化を続け、世界秩序を大きく乱したオバマ前大統領との違いを明確に見せつつ、イラク戦争で地上軍の派遣、体制の転換、占領をし、多大な犠牲を生んだブッシュ元大統領程の介入もしないという絶妙なバランスを取っているので評価したいところである。

だが、小さな政府を理想とする米国の保守層の間では(米国全体でもそうだが)、余りにもイラク戦争の「トラウマ」が大きく残っているのだ。

それで、「結果として」シリア攻撃を非難している日本の左派と米国保守派の主張が一致するという、奇妙な事態に陥っている。

また、シリア攻撃に関してのメディアの報道が事実を捉えているとは言え、それが煽動を含んでいる印象も拭えない。例えば、先程のフォーチュンの記事の下りを参考にして欲しい。

「(トランプ支持者達のシリア攻撃)反対は、トランプ連合の浸食が少なくともコメンテーターや言論人の間では引き続いていることを示している。それは今度の中間選挙について、重要なことを示唆している可能性がある。最も顕著だったのは、FOXニュースホストのタッカー・カールソン氏やローラ・イングラハム氏が両者揃ってトランプ氏の決定に懐疑的な様子であったことだ」

何が言いたいのかというと、日本では今年9月に行われる自民党総裁選で安倍総理を引きおろそうとする工作や報道があるのと同様、アメリカでは中間選挙を視野にトランプ支持層の弱みに付け込もうとして、離反・分断工作やこの手の報道が意図的になされている可能性があるのだ。

そういう意味での米国保守のメディアリテラシーを心配する必要はない、と願いたいものだ。

裏切られ続けてきた「南北融和」を知らない米国人

さて、次に南北首脳会談に対する米国内の反応を見てみよう。

政治の現場にいるプロの間ではもちろん北朝鮮への警戒は絶えないわけだが、一方の民間では熱烈なトランプ支持者達が(シリア攻撃時の批判はどこへやら)、トランプ大統領を大絶賛したいがために南北首脳会談を「成功」と位置付けることに躍起になり、本質を見失っているところが伺える。

例えば、ツイッターやフェイスブックでのトランプ支持者達のコメントは大方、

「南北首脳会談で朝鮮戦争が終わる」
「歴史的な勝利だ」
「会談が行われたのはトランプのおかげだ」
「トランプはノーベル平和賞受賞すべきだ」

といった、「南北首脳会談へ両国を導いたトランプ大統領が会談の実現だけで平和を招き、全てを解決した」とも言わんばかりの「トランプ上げ」「トランプ全肯定」のお祝いムードなのである。

※反トランプ派は、会談を導いたのが韓国の文在寅大統領や金正恩氏の妹である金与正氏だとの位置付けをし、トランプ氏への「蚊帳の外」論を展開している。

まさか同盟国である日本の国民が、この会談を冷ややかな目で見ているなんてトランプ支持者達は思いもしていない。

私は、会談までのプロセスを否定したり、先行きを悲観視したりするつもりはない。

だが肝心なことは、日米保守の認識の大きな差だ。北朝鮮に対して一定の疑念を持っているものの、米国一般市民は保守派でさえも、日本の保守派が考えるような過去複数回の南北首脳会談なんて視野にない。

現在の韓国の大統領が親北朝鮮で会談が茶番同然であるなどとの発想もない。日本が何度も両国に約束を破られたことを知る由もない。

なぜなら、日本を含む東アジアは、米国から遠く、文化の全く違う、よく知らない、よくわからない場所だからだ。

トランプ大統領は、安倍総理と親しく、東アジア情勢を理解しているだろうが、大統領と支持者の間には何かと認識の差があり、そこに反トランプの左派メディアや中間選挙を睨む勢力、分断工作を目論む勢力がつけ込んでいる構図がある。

それが結果として、日米同盟を揺るがしかねない。

だからこそ今、安倍総理に任せきりにならず、日本人が正しい情報や東アジアの実状をアメリカの保守に伝えねばならない。

「同盟国」だからと安心してはいけない。同盟国だからこそ、お互いに共通認識を持つことに励まなければならない。今のまま、民間で歩調の合っていない同盟関係を続ければ、これからが峠である北朝鮮問題や我が国の安寧や繁栄が尚更困難な状況になりかねない。

randomyoko(ランダム・ヨーコ)/日米戦略アドバイザー。YouTube NextUp賞受賞。トランプ大統領の当選を予測したことで一躍有名になり、メディアにも取り上げられた。「正論」「JAPANISM」などの言論誌にも論文が掲載されている。公式ファンクラブ(camp-fire.jp)では毎月限定動画を視聴できる。

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