米国「高校生による銃規制推進運動」がSEALDsにそっくりな理由

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米フロリダ州で2月半ばに起きた銃乱射事件から約一ヶ月後の3月24日、米首都ワシントンで「March For Our Lives(私たちの命のための行進)」と題された銃規制推進派による大規模なデモが実施された。

報道によると、主催者は事件の起きた高校の生徒らで、数十万人が参加し、全米の800カ所以上と国外でもこれを支持するデモが展開されたとのことだ。

▽全米800カ所、数十万人が大規模デモ 銃規制求め行進(CNN)
www.cnn.co.jp

今回は、このデモに関わる銃規制推進派の素顔に迫りたい。

莫大な資金集めを行う「銃規制推進運動」

まず、デモのホームページを見てみると、抗議名入りの物販コーナーが目を引く。Tシャツや帽子等の衣類は勿論のこと、マグカップからトートバッグまでと品揃えが豊富なのだ。様々な意図を感じる。

#MarchForOurLives Store
(銃規制推進派の物販サイト)

同サイトにはまた、抗議の声を広めるための「ツールキット」が様々な形で用意されている。その中には印刷し、ブレスレットとして「proudly(誇らしげに)」身に付けるための値札画像も見られる。

「私たちの命に値段をつけるな」というアピール?

フロリダ州選出のマルコ・ルビオ上院議員(共和党)が全米ライフル協会(NRA)から献金を受けたことに抗議するためとのことだ。どうやら、市民の命をNRAに売り飛ばしているイメージらしい。

同サイト上でスポンサーやパートナー等を募集しているようだが、現状ほとんど開示はされていない。

とは言え、このデモには例えば、映画監督のスティーブン・スピルバーグ氏、米メディア界の女王で大富豪のオプラ・ウィンフリー氏、俳優のジョージ・クルーニー氏夫妻、ファッションブランドのグッチ等がそれぞれ50万ドルずつの寄付をし、セールスフォース・ドットコム最高経営責任者のマーク・ベニオフ氏は100万ドルの寄付を表明したとのことが報道で確認出来る。

▽Behind Millions Of Dollars Raised By Parkland Students, An Adult Board Of Directors(huffingtonpost)
www.huffingtonpost.com

また、このデモは「GoFundMe」というクラウドファンディングでもプロジェクトを立ち上げ、300万ドル以上もの寄付金を集めている。米シンクタンクのキャピタル・リサーチ・センターによると、これに加え、リベラル・革新派の寄付金媒体である『アクション・ネットワーク』でも寄付金を集めたそうだ。因みにその具体的な額は未公開とのこと。

▽gofundme:March for Our Lives
www.gofundme.com

▽Who’s Paying (to) “March for Our Lives?”(Capital Research Center)
capitalresearch.org

非営利・公共のラジオネットワークであるナショナル・パブリック・ラジオは、この銃規制推進デモの

「コストは500万ドルで、残りの数百万ドルがロビー活動にあてられる」

との見立てを発表した。政治家が献金を受け取るのは駄目だが、自分達が政治目的のために献金を受け取るのは良いというのは筋が通っていないと感じるのは筆者だけか。

▽’March For Our Lives’ Cost $5 Million; ‘Several Million’ Left For Lobbying(NPR)
www.npr.org

裏で民主党が仕切る「高校生の社会運動」

更に腑に落ちないのは、その勢力が大人に仕切られている点だ。元市長や弁護士、その他銃規制推進の活動団体関係者らなど、具体的な役員名が上記ラジオを始めとする報道で列挙され始めている。

一連の動きを受けてハフィントンポストも、

「パークランドの学生たちが集めた何百万ドルもの裏には、大人の役員会の存在がある」

という見出しの記事を出し、

「学生らが銃犯罪防止運動の新しい顔となるかもしれないが、舞台裏では大人が動いている」

との副題を付けている。

▽Behind Millions Of Dollars Raised By Parkland Students, An Adult Board Of Directors(huffingtonpost)
www.huffingtonpost.com

それは単なる大人ではなく、もちろん民主党勢力だ。隠れる様子もなく、例えばオバマ政権時代の大統領補佐官で象徴的な存在であったバレリー・ジャレット氏はデモ現場での中継に登場して同デモを誉め称えた。

何を規制すべきかわかっていない高校生たち

さて、このデモ中に参加者たちの本気度に迫った者がいる。高等教育のための大学生向け保守系ニュースサイト『キャンパス・リフォーム』のディレクターを務めているキャボット・フィリップス氏だ。

「参加者は何百万もの人々に影響を与えるのだから、討論が出来る状態にあるべきだ」

と考えた彼は、当日、ワシントンD.C.のデモ現場に赴いた。

そこで、国民の武器を保有し携行する権利を保障している「米国憲法修正第2条」や参加者たちが禁止を掲げている「アサルトライフル」とは何かという質問を参加者の学生たちに聞いて回った。そして、多くが回答に行き詰まる様をFOXニュースや自身の媒体で報告した。

▽Protesters say ban assault weapons…whatever they are(campus reform)
www.campusreform.org

前者の質問には、

「時代遅れで現代にそぐわない」
「何も良いことや生産的なこと、平和的なことがない」

などの抽象的な声が相次いだ。

後者に関しては取材の中で答えられている人はゼロ。中でも、アサルトライフルとは何かの問いになぜか、

「あんた馬鹿なの?」

威勢良く言い返しながらも全く答えないままに逃げてしまった女性のシーンを抜粋した動画がFacebookに投稿されたのだが、再生回数は160万回を超え、1万6千回もシェアされた。

禁止したいと訴えている武器そのものがどんなものかすら知らないとは理解しがたい事態だからであろう。 

アサルトライフル(assault rifle)は、実用的な全自動射撃能力を持つ自動小銃のこと

この状況を受け、フィリップス氏は二つの問題点を指摘した。

一つ目は、このデモが学生たちだけによって主催されているわけではないのは明白であるため、どういった組織が動いているものなのか、という謎。

二つ目は、学生らは変化が必要だとは感じていながら求める変化が何であるか教育されていないという点であった。

米国版「SEALDs」?

参加者レベルでは意識にばらつきがあるものなのかもしれない。では、今銃規制推進派の新顔として象徴的になり、中核を担っている銃乱射事件の生存者たちはどうだろうか。

最も有名なのはデイビッド・ホッグ氏とエマ・ゴンザレス氏だ。彼らは日本で例えるなら、安保法制の議論が激化していた頃の奥田愛基氏(当時SEALDsメンバー)的位置にある。

米国の奥田愛基氏?ことデイビッド・ホッグ氏

特にホッグ氏は、影響力を武器に、保守派ラジオホスト・テレビ司会者で多大な人気のあるローラ・イングラハム氏への攻撃に走った。

ことの発端は、入学志願をした4つの大学に現在17歳のホッグ氏が不合格となったことについてのイングラハム氏の反応だ。

ホッグ氏は大学不合格となった後、

「僕は今世界を変えることで忙しいから驚いてはいない」
「大学に行かなくても素晴らしい人は沢山いる」

など、弁明とも取れる発言をしていた。

イングラハム氏はその発言のあるインタビューが掲載されている記事をリンクしながら、

「ホッグ氏は願書を提出した大学4校で不合格となり、泣き言を言っている」
「GPA(成績評価)4.1で、UCLA(カリフォルニア大学ロサンゼルス校)に落ちたんですって。合格者平均を見れば分かるものを」

などとツイートした。

すると、数時間後、ホッグ氏はイングラハム氏の主要スポンサー企業のリストをツイートし、63万人(当時)以上ものフォロワーに向けて、各社にクレーム(ボイコット表明)を入れるように促すと、11社が次々に広告を出さないことを表明。

その後、イングラハム氏はホッグ氏への謝罪をツイートした。だが、ホッグ氏は

「スポンサーへの配慮でしかないので謝罪を受け入れない」

と示した。

しかし、人気者のイングラハム氏へは支持を示す者が多々出ており、今や

「#IStandWithLaura(私はローラと共にある)」

とのハッシュタグが発生し、イングラハム氏への支援表明の際にあらゆるSNS上で使用されている。そしてイングラハム氏支持者は、ホッグ氏の呼びかけに応じた11社へのボイコットを呼びかけるという「逆襲」に出た。

ローラ・イングラハム氏を支持する投稿

イングラハム氏の番組へのボイコットに対し、ボイコットで返すとは、もはやボイコット戦争かと思いきや、CBSのマネーウォッチによると、イングラハム氏のスポンサーは129社残っているとのことだ。この動きの影響の程は定かではない。

▽Advertisers bail as Laura Ingraham goes on vacation(MONEY WATCH)
www.cbsnews.com

また、保守派もやられてばかりはいない。

犠牲者というカードを利用したり、都合の良い時は「大人」、悪い時は「子供」と身分を使い分けるホッグ氏の態度を見かねて、この際17歳らしく対処してあげたら良いのではとのことで、

「良い考えがある。皆ホッグ氏を無視してはどうか?」

との提案まで出て来た。

▽I Have An Idea. Why Don’t We All Just Ignore David Hogg?
www.dailywire.com

少なくとも、影響力という「武器」を使って、自分は好き勝手発言をしながら他者の言論の自由はなりふり構わず阻止しようとするホッグ氏には「銃」という武器を与えない方が実際のところ、良いのかもしれない。
 

randomyoko(ランダム・ヨーコ)/日米戦略アドバイザー。YouTube NextUp賞受賞。トランプ大統領の当選を予測したことで一躍有名になり、メディアにも取り上げられた。「正論」「JAPANISM」などの言論誌にも論文が掲載されている。公式ファンクラブ(camp-fire.jp)では毎月限定動画を視聴できる。

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