英語で日本人の意見を世界に発信している著名なビデオブロガー、randomyoko(ランダム・ヨーコ)氏。最近は米国保守言論界との人脈も築き、独自の知見を広めつつある。これまで、米国保守メディアの記事が邦訳されることは稀だったが、今後「選報日本」web上においてランダム・ヨーコ氏が分析して紹介する。
「メリー・クリスマス」が少数者への差別?
リベラル側による言葉狩りの進むアメリカ。差別や偏見を取り除くとの建前で「ポリティカル・コレクトネス(政治的公正)」を振りかざし、アメリカの要である宗教観や道徳観を崩しにかかる左派の近年の実態や日本への影響を考えたい。
キリスト教国家でない日本で「メリークリスマス」との祝福の文言に街中が包まれる一方で、アメリカでは7割に至る多数派がキリスト教徒であるにも関わらず、近年「少数派への差別になる」との論理で、その文言が弾圧され、「ハッピー・ホリデーズ」に取って代わる事態に追い込まれているのはご存じの方も多いだろう。
それを案じたトランプ氏が昨年末メリークリスマスと連発し、「ベリー・メリー・クリスマス」と強調したのは記憶に新しいが、このクリスマスを巡っての論議に彼が目立って参戦したのは、大統領選で共和党の候補者指名を争っていた2015年の11月に遡る。
コーヒーチェーン大手スターバックスがクリスマスシーズンのカップとして、クリスマス用のデザインを省いた無地の赤いカップを使い始めたことを受け、不買運動を示唆し、保守派の不満を吸い上げたのだ。
「トランプ」の名前を報道すれば数字の伸びる今の世の中では、このクリスマス騒動はあたかもトランプ氏が巻き起こしていることであるかのように責任が押し付けられているが、この議論は大統領選以前からある。
例えば今日でも左派が使うメジャーな事例は、昨年までFOXニュースキャスターを務め、現在はNBCニュースで顔となっているメーガン・ケリー氏の言い放った言葉だ。
「また誰かが『白人のサンタというのは人種差別だ』と言っています。ところで、これを観ているお子さん達、サンタはとにかく白人ですからね」
▽’Santa just is white … Jesus was a white man too’, says Fox News presenter (fox news)
https://www.theguardian.com
これは2013年12月の報道での発言だが、何故彼女はこんなことを言ったのであろうか。実は彼女はアイシャ・ハリス氏が「スレート・マガジン」に寄稿した『サンタクロースはもう白人の男であるべきではない』という記事に反応を示したのであった。
▽Santa Claus Should Not Be a White Man Anymore (Slate)
http://www.slate.com
何とも驚いたことにこの記事の中で彼女は、従来の太った白人男性のサンタイメージが、今後「ペンギン」に替えられるべきだと真面目に主張している。また、近年では黒人版サンタが必要だという議論も、アメリカでは盛んである。
そういった議論では、「そもそも白人のサンタの像が正しいかどうかもわからない」という前提が取られてはいるので完全否定は出来ないものの、左派がポリコレを盾にしながら長い間世界中で続けて来た歴史観や文化観に対する「修正主義」の訴えを露骨に行っていることには、違和感を覚えざるを得ない。
伝統文化を破壊する左派メディア
さて、この記事を掲載した「スレート・マガジン」であるが、「ブライトバート・ニュース」によると、かの媒体はこの度、オンライン雑誌「サロン」による「ホールマーク・チャンネル」叩きに便乗し、攻撃を拡大しているとのことだ。
▽Critics Attack Hallmark’s Christmas Movies: ‘They Brim with White Heterosexuals’ (breitbart)
http://www.breitbart.com
まず、「ホールマーク・チャンネル」とは、アメリカのテレビ局で、同名のグリーティング・カード会社の系列である。ドラマや映画、ミステリーなどの様々なジャンルがあるが、クリスマスやバレンタイン、母の日、父の日など季節に応じた映像作品を放送する仕組みがある。
内容は、夢や道徳観に溢れ、キリスト教的側面も見られる。心温まるハッピーエンドが基本で、展開がパターン化しているものの、家族向けであることもあり安心して観られ、根強い人気がある。クリスマスにこのチャンネルの映画を観るのが慣例である家庭も多い。
では、どうしてオンライン雑誌「サロン」や「スレート・マガジン」はこのチャンネルを攻撃するのだろうか。
理由は単純で「白過ぎる」からだそうだ。「ホールマーク・チャンネル」はクリスマスが近付くとクリスマスコンテンツを放送しているが、それを彼等はこの度「スーパー・ホワイト・クリスマス」だと非難した。
そもそもホワイト・クリスマスとは、クリスマスの前日か当日に積雪があり、辺りが白くなることを指す。オンライン雑誌「サロン」は「スーパー(超)」と強調しながら、ホワイトという言葉にある「白人人種の/白人支配の」という意味合いをかけて批判したのだ。
その理由は、「ホールマーク・チャンネル」のクリスマスの話が「少数派の俳優達をのけ者にしている」からだと主張する。出演者が白人メインであるため、多様な家族を反映せず、存在したことのないアメリカ、つまり「幻想」を描いており、ガッカリするものだと言う。
多数者を差別する、恐るべき修正主義
続いて「ブライトバート・ニュース」は次のような内容の「スレート・マガジン」の文章を引用している。
「ホールマーク・チャンネル」は、小さな町のビジネスが栄え、既に「アメリカが再び偉大になった」かのような現実逃避を示すことで赤い州(共和党支持地域)にアピールをしている。トランプ支持の女優が演じる主役はあり得ないほど立派な家に住み、作品は犬に対してでさえもメリークリスマスと大声で叫んで回る白人の異性愛者で溢れている。
つまり、小さな町で白人が幸せそうに暮らしてクリスマスを祝うドラマや映画は実際にあり得ない現実逃避であり、トランプ支持者へのアピールであり、ちょい役や引き立て役にしかならない黒人やラテン系、ゲイ、フェミニスト、イスラム教徒等への差別であると言いたいらしい。
少数派メインの作品を作ろうと主張するならまだわかるが、既にある国民的人気の作品やこれまでの共通の文化観・認識を曲解した政治的な目で攻撃し、修正を試み、完全なる平等をもたらそうとするのは、もはや宗教や神話、自由等を無理矢理弾圧する共産主義的発想とも言える。
これらの左派媒体による批判を見ていると、「多数派への差別をすれば少数派の差別をなくすことになる」と思い込んでいると感じざるを得ない。だが、それは余りに馬鹿げたロジックであるため、もはやこのような批判をすることで、少数派と多数派の衝突を意図的に煽動しているとも考えられる。
日本にも飛び火した「ポリコレ」
日本では、昨年の大晦日にお笑いコンビ「ダウンタウン」の浜田雅功氏が顔を黒く塗り黒人に扮したことが英BBCや米ニューヨークタイムズなど海外メディアに批判される騒動が起きた。日本のエンタメ界にも国内外の左派メディアが目を向けているわけで、白人へ集まる批判を他人事だと傍観していては大変なことになろう。
▽「ガキ使」浜田雅功の黒塗りメイク BBCやNYタイムズはどう報じた?(huffingtonpost)
http://www.huffingtonpost.jp
そして、こういった共通の価値観への「修正主義」、「平等主義」には政治的な動機が背景に確実に存在しているので、ポリコレ(ポリティカル・コレクトネス)の盾に惑わされないよう、情報共有や国家間の連携を活発にすることが求められている。
randomyoko(ランダム・ヨーコ)福岡県出身のビデオブロガー。YouTube NextUp賞受賞。トランプ大統領の当選を予測したことで一躍有名になり、メディアにも取り上げられた。「正論」「JAPANISM」などの言論誌にも論文が掲載されている。公式ファンクラブ(camp-fire.jp)では毎月限定動画を視聴できる。