「プーチン信者」大量出現は“ネトウヨ”現象第二幕だ

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Haloísio Jota - 投稿者自身による作品, CC 表示-継承 4.0, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=116221174による
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プーチン大統領率いるロシアによるウクライナ侵略について、ネット上ではフェイクニュースの嵐となった。

無論、その中にはマスコミが「報道しない」あるいは「大きくは扱わない」事実も存在する。

例えばウクライナでは平成26年(西暦2014年、皇暦2674年)の政変以来、ネオナチ勢力が力を伸ばしている。それはウクライナ情勢をウォッチしていたものであれば周知の事実だ。

しかし、ウクライナ批判から何故か「プーチンは救世主」と言った主張が飛び出すのである。南樺太、千島諸島、色丹島、歯舞群島を不法占拠されている国がプーチン大統領を称賛するとは、異常だ。

かつてロシアを擁護するのは左翼勢力に多かった。今でもロシアに好意的な左派勢力は存在している。

だが、今回の件の異常な点はこれまで北方領土問題等でロシアを敵視していたはずの右派の中で「親プーチン」勢力が誕生していることであろう。その中には私の知人も複数人含まれている。

プーチンに好意的なネトウヨ

この背景にはネトウヨが予想以上に力を持ってきていることがあるだろう。

拙稿『「ネトウヨ」の正体は左翼だった』で述べたように、ネトウヨは初期からプーチン大統領に好意的であった。

平成20年代初頭から多量の安倍信者を生み出した古参のネトウヨサイト「国民の知らない反日の実態」がプーチン政権の与党である統一ロシアを「右翼」「保守」に分類していた事実は、いま少なくないネトウヨが親ロシア派となっている現状を見ると、かなり象徴的だ。

だが、今回の件は既存のネトウヨ現象だけでは説明が付かないであろう。

例えば反ワクチンを訴えていることで注目を集めた陰謀論団体「神真都Q」(やまとキュー)は、「ロシアはウクライナでの作戦において様々なカバール側計画の証拠を掴んでいる」などと主張している。

同団体は日本民族中心主義を訴えているし、また反ワクチン訴訟を起こしている弁護士が帝国憲法復原・改正論者であることでも判るように、同団体の主張自体は右派と親和性が高いとは言える。(なお、帝国憲法復原・改正を訴えている反ワクチン政党の祖国再生同盟と神真都Qとは無関係である)

しかし、ネトウヨの多くはむしろ反ワクチンを左翼扱いしているし(帝国憲法復原・改正を唱える祖国再生同盟や日本民族中心主義の神真都Qが左翼に見えるのもかなりの陰謀論思考であるが、ここでは置いておく)、また神真都Qのような団体には「安倍晋三断固支持」といったような、従来のネトウヨに見られた特徴は当て嵌まらない。

つまり今回の件はネトウヨと非ネトウヨとが同じ主張をしているという特徴がある。

政界にもプーチン擁護派

例えばネトウヨの間に大きな影響を与えている「チャンネル桜」はウクライナ侵攻の一か月以上前から「追い詰められるプーチン、ウクライナ国境はパールハーバーか?」という動画を公開し、水島総社長自ら「追い詰められているのはプーチン。グローバリストの中で孤塁を守っている」等とプーチン擁護の発言をしていた。

今でこそ自民党と距離を置いている水島氏だが、彼はつい数年前まで安倍晋三支持の論陣を貼っていた人間である。今でも「チャンネル桜」は安倍元首相に好意的だ。

事実、ネット上では安倍晋三支持者がプーチン大統領に肯定的な発言をすることも少なくない。それどころか安倍政権に近かった鈴木宗男議員(日本維新の会)がプーチン大統領に肯定的な発言をするなど、政界にも同様の潮流が生まれている。

こうした現状は、今の私には「ネトウヨの再編」と映る。

元々ネトウヨの起源は左傾化したマスメディアに不満を持つ人たちが日本会議や安倍晋三元首相に接近したことに始まる。安倍元首相の再登板前、彼らはむしろ「野党」の側であった。

ネトウヨはフジテレビ糾弾デモを行うなど、従来の保守媒体であるフジサンケイグループとはむしろ対立していた。だが、足掛け9年にもわたる安倍政権下で安倍信者の「体制化」が進み、フジサンケイグループがネットニュースの無料配信に力を入れていたこともあり、少なくないネトウヨの「産経化」が進行していた。

トランプ信者との近似性

しかし産経新聞を含む既存メディア全体を疑う勢力は、ネトウヨに限らずいつの時代にも存在する。その受け皿が「プーチン信者」であり、また少し前の「トランプ信者」では無いのか。

令和2年(西暦2020年、皇暦2680年)には少なくないネトウヨが「トランプ信者」と化した。トランプ前大統領がプーチン大統領に比較的好意的であることからすると「プーチン信者」現象の萌芽は「トランプ信者」現象の頃からあったとみてよい。

いまネットを見ていると、これまで政治に無関心であった人間が「ネットde真実」に目覚めてプーチン信者になっているケースもあるようである。事実、彼らの中には「『日本国憲法』を守れ!」と言いながら「日本民族の独立を守れ!」と言うなど、従来の「右派・左派」区分に馴れた者からしたら理解したがい主張をしている者までいるが、それは彼らが既存「右派・左派」いずれの界隈にも所属していない証左であろう。

これはかつてのネトウヨの草創期にも似ている。この時も政治に無関心な人物と日本会議系の人物とがネットを通じて交流を深めて独特の世界を形成していった。

今の日本は「第二のネトウヨ」誕生の時期となっているように思われる。

彼らの中には「元祖ネトウヨ」のチャンネル桜のような存在もいれば、神真都Qのように従来の政治運動とは無関係に誕生したものの一見右派的な主張をしている者もいる。

だが、彼らは決して「保守」「右派」といえるものでは無い。

従来型ネトウヨである「安倍信者」「トランプ信者」に次いで登場した「プーチン信者」にも警戒が必要である。

日野智貴(ひの・ともき)平成9年(西暦1997年)兵庫県生まれ。京都地蔵文化研究所研究員。日本SRGM連盟代表、日本アニマルライツ連盟理事。専門は歴史学。宝蔵神社(京都府宇治市)やインドラ寺(インド共和国マハラシュトラ州ナグプール市)で修行した経験から宗教に関心を持つ。著書に『「古事記」「日本書紀」千三百年の孤独――消えた古代王朝』(共著・明石書店、2020年)、『菜食実践は「天皇国・日本」への道』(アマゾンPOD、2019年)がある。

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