元内閣特別顧問・稲盛和夫氏逝去 晩年まで「保守系野党」に期待

日野智貴
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令和4年(西暦2022年、皇暦2682年)8月24日、元内閣特別顧問で公益財団法人稲盛財団理事長・京セラ名誉会長等である稲盛和夫氏が90歳で逝去した。

稲盛和夫氏は昭和7年(西暦1932年、皇暦2592年)に鹿児島県で生まれる。昭和30年(西暦1955年、皇暦2615年)に鹿児島県立大学(現・鹿児島大学)工学部を卒業、大学の専門は有機化学であったが就職難もあり専門外のセラミック関係の研究職として就職する。セラミックの新素材開発で成果を挙げる等した後、昭和34年(西暦1959年、皇暦2619年)京都セラミック(現・京セラ)を起業した。

京セラは一代で世界的な企業となり、今では年間1兆8000億円の売り上げを達成している。そうした稲盛和夫氏の経営手腕は「稲盛経営法」と呼ばれ、多くの経営者が参考とした。

また、薩摩では明治維新まで浄土真宗が弾圧されており、稲盛和夫氏はそうした中で浄土真宗の信仰を守ってきた「隠れ念仏」の家で育った。少年期には自身の病気がきっかけで生長の家に入信した。

そうした経験から自身も臨済宗妙心寺派第31代管長の西片擔雪の下で得度するなど、自身の信仰心を隠さず宗教への造詣の深さも示していた。一方、一部では「稲盛哲学に宗教色がある」というような評価も為された。

稲盛氏自身は自身が創設した京都賞に「本当は、哲学や宗教を入れたかった」と述べるなど、むしろ宗教を肯定的に捉える発言をしている(稲盛和夫2017年「動機善なりや、私心なかりしか」京都大学人と社会の未来研究院『こころの未来』17号所収)。

昭和59年(西暦1984年、皇暦2644年)の通信自由化に伴い京セラの資金を投入し第二電電 (現KDDI) を設立した頃から政治にも関わりをもつようになり、平成5年(西暦1993年、皇暦2653年)に自民党が分裂して以降は、財界人でありながら非自民の保守系候補者を公然と応援して注目を集める。

平成22年(西暦2010年、皇暦2670年)には民主党政権初の内閣特別顧問となり、自身が後援会会長として支援してきた前原誠司国土交通大臣(当時)の意向もあり日本航空の会長に無報酬で就任、日航再建を実現させる。

一方、日航に寄生していた労働組合の既得権益を全否定し大胆なリストラも実施したその手腕は、民主党内の左翼勢力や一部の労働組合系政治家からは批判もあったとされる。稲盛氏自身も民主党政権の実態に失望し、平成24年(西暦2012年、皇暦2672年)には民主党を離党した議員が主なメンバーである日本未来の党の結党宣言に名を連ねるなど、民主党と距離を置いた。

だが晩年まで保守系野党議員への支援は続けており、最晩年の令和3年(西暦2021年、皇暦2681年)に高齢で引退するまで前原誠司国民民主党代表代行の後援会会長を務めていた。

今回の逝去を受け、一貫して故人の支援を受けて来た前原誠司議員はTwitterで「『動機善なりや、私心なかりしか』。稲盛和夫会長からいつも投げかけられた言葉を胸に刻み、もう一度、自民党と対峙できる政党を作るために頑張ります。今までのご指導ご鞭撻、誠に有難うございました。ご冥福を衷心よりお祈り申し上げます」とコメント、かつて稲盛氏に送ったと言う日空再建が出来るのは「稲盛名誉会長しかおられない」と思い依頼したこと等を示す内容の手紙の下書きの画像も公開した。

稲盛氏が結党に参加した日本未来の党に所属していたこともある達増拓也岩手県知事はTwitterで「岩手県でも『盛和塾』で多くの若手経営者を指導して下さいました。民主党による政権交代や、未来の党の発足を、強力に支えて下さった方でもあります。合掌」とコメントした。

稲盛氏の兄弟子に当たる西片擔雪の会下衆で京都光明地蔵院(宇治市)主管でもある一般社団法人いのちを守る親の会の大熊良樹理事長はブログで、彼の師が西片擔雪であることに触れ「この世に生まれて『素晴らしい師』に出逢い。多くの人のお役に立つ人生を、笑顔で喜んで歩めることのなんと素晴らしい事でしょう。本当に素晴らしい人生であったことでしょう。稲盛和夫氏のご冥福をお祈り申し上げます」とコメントした。

日本維新の会所属(元日本未来の党)の外山斎元参議院議員はTwitterで「ご冥福をお祈りいたします。直接お話しした事はありませんが、大変影響を受けた方でした。『私心なかりしか、動機善なりか』と語られた言葉が私の今の行動の規範となっております」とコメントした。

自民党の田尻善裕熊本市議はTwitterで「私の初当選したお祝いをして頂いた事は生涯忘れる事はありません。稲盛スピリッツがどれだけ心を燃やす起爆剤となった事か。心から御冥福をお祈りします」とコメントした。

なお、京セラは公式サイトで「ご遺族の強い意向により、ご供花、ご供物、ご香典、ご弔電、ご弔問等は固くご辞退させていただきます。何卒ご理解のほど、よろしくお願い申し上げます」と説明している。

日野智貴(ひの・ともき)平成9年(西暦1997年)兵庫県生まれ。京都地蔵文化研究所研究員。日本SRGM連盟代表、日本アニマルライツ連盟理事。専門は歴史学。宝蔵神社(京都府宇治市)やインドラ寺(インド共和国マハラシュトラ州ナグプール市)で修行した経験から宗教に関心を持つ。著書に『「古事記」「日本書紀」千三百年の孤独――消えた古代王朝』(共著・明石書店、2020年)、『菜食実践は「天皇国・日本」への道』(アマゾンPOD、2019年)がある。

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