令和4年12月25日に投開票が行われた西東京市議選(定数28)で、初出馬したお笑い芸人の長井秀和氏が3482票を獲得しトップ当選した。
長井氏の父は公明党所属の元市議で、長井氏自身も小学校から大学まで創価学会系の学校に通う学会員2世だった。創価大学卒業後に芸人デビュー。平成11年ごろから頭角を現し、平成15年には人気タレントとして知られるようになった。
しかし平成19年に女性問題を起こしたことがきっかけでテレビ出演がなくなり、続けて平成24年には創価学会を脱会している。
令和3年8月に西東京市議選への立候補を表明。それ以降、「選挙で金をばら撒かなくていい政治を」などの主張を掲げながら、街頭に立つなど地道な活動を続けていた。
転機となったのは7月8日の安倍元首相暗殺だった。容疑者が統一教会への恨みによって犯行を起こしたことが明らかになると、長井氏は「宗教は阿片。宗教団体はコカイン、マリファナ、ヘロイン。間違いない!」(7月16日)などと宗教やカルトへの批判を展開し始めた。
そして7月19日にはTwitterに以下のように書き込んでいる。
「公明党から出るんですか?」と聞かれる事が多いんですが、「無所属です」と答えます。 私が創価学会生まれ育ちだから、思われるんでしょうね。 創価学会家系なのに、無所属で選挙に出馬しようとする事が、創価学会からは反逆者・裏切り者扱いされるか世間は知らないんですよね。
創価学会家系の人間が公明党に伺いを立てないで選挙出馬なんて、 むしろ創価学会関係者から大反発されます。 私は従来の政治が宗教を利用する実態を本当に憂慮しています。 宗教団体が個人の人生を破壊していく様を何百人も見てきました。政治と宗教の問題には切り込んでいきます。
長井秀和氏Twitter(原文ママ)
その上で、宗教団体が組織的に選挙活動に関わることについて厳しく批判し始めた。その頃から、長井氏の政治活動用ポスタがー剥がされるなどの事件も起きている。そして12月20日、ついに創価学会は長井氏が選挙演説で学会の名誉を毀損したとして東京地裁に提訴したのである。
長井氏は当選後も「カルトの被害の上に票を取りまとめる政治家に鉄槌を」などの主張を繰り返している。
因みに公明党は同市議選に5名を擁立し全員を当選させたが、得票数では前回(平成30年)から約1100票も減らしている。今回の最下位当選者(立民現職)が約1300票であったことを考えると、決して少ない数字とは言えない。
長井氏のトップ当選が元テレビタレントという知名度を背景にしたものであることは否めないが、安倍元首相の暗殺によって俄かに高まった「カルト・新宗教批判」が創価学会へ波及した格好だ。
コメント