【11月4日】平民宰相・原敬が暗殺された日

11月4日の「今日は何の日」を書いていきたい。

ちょうど100年前のこの日、当時の日本国総理大臣の原敬が暗殺されるというショッキングな事件が起きた。

原敬暗殺事件

事件が発生したのは、1921年(大正10年)11月4日。時の首相・原敬が、鉄道省・大塚駅職員の中岡艮一(なかおか こんいち)により刺殺された。場所は東京駅の乗車口(現在の丸の内南口)であった。

中岡が凶行に及んだ動機は、一般に政治的不満によるものとされる。

原が財閥中心の政治を行ったと中岡が憶測したこと、原が普通選挙法に反対したこと、また内戦中のロシアで起きた「尼港事件」において多数の日本人の犠牲者が出たことなど理由が挙げられている。

原が「平民宰相」のあだ名を持つことはよく知られる事実だが、それは戦前の貴族制度であった華族の地位を固辞し続けたためである。中岡は原が必ずしも平民(国民)に寄り添っていなかったと思っていたのだろうか?

不可解な裁判と恩赦

即座に身柄を拘束されて逮捕された中岡であったが、しかし死刑の求刑に反し、無期懲役の判決を受けた。その後の控訴でも判決は覆らなかった。

なおこの裁判は「日本国の首相の暗殺」という重大事件でありながら、異例の速さで進められた。また調書なども何故か大半が残されていないなど、不可解なものであった。
判決確定後も、中岡には特別な処遇がなされた。減刑が3度も行われ、事件発生後のわずか11年後の1934年には早くも釈放されている。

こうした不可思議な流れから、原敬暗殺事件には、何らかの政治的背景が存在するのではないかとの指摘もある。

「玄洋社など当時の右翼勢力と関係があった」という説。「原の政敵やワシントン海軍軍縮条約反対派の関与があった」という説。

中には、「中岡の上司が発言した『今の日本からは武士道精神が失われた。腹を切る(責任を取るの意味)と言うが、政治家が実際に腹を切った試しがない』という内容の言葉を、「(腹を切る)ではなく(原を斬る)」と勘違いした」という質の悪い冗談のような説もある。

しかもその発言をした張本人で中岡の上司である橋本栄五郎は、その言葉が事件の直接的なきっかけとなったとして、実際に殺人教唆の疑いで逮捕までされている。もっとも判決は無罪であったが。

ちなみに原は、足尾銅山における鉱山開発事業を展開した古河財閥の副社長だった。そして中岡の父親の中岡精(なかおか くわし)は古河鉱業の社員で、足尾銅山の木材主任をしていたのだ。ところが精は現場で軋轢を起こし、退社を余儀なくされているのである。

非常に不気味な符合だが、このアプローチから研究している向きはほぼない。この線からの研究は、今後の課題かも知れない。

中岡のその後

中岡は釈放後、満州に渡って陸軍司令部に勤務することになる。しかし戦時中には、比較的安全である軍司令部付きとなっていた。

中岡は中国大陸にいた頃、ソ連からの難民として流れ込んだタタール人に興味を持ち、1937年2月に神戸モスクでイスラム教に改宗している。また1941年にはイスラム教徒の女性・姜鳳芝と結婚までしている。戦後帰国し、1980年に77歳で死去。

このように中岡自身が非常に謎の多い人物であり、事件の真相は今も不明な点も多い。原敬暗殺事件は、戦前の日本を代表するミステリーであると言えるのかも知れない。

ちなみに原の死後から約30年後に出版された『原敬日記」の冒頭には、あらかじめ遺書が綴られている。

まさか自身の身に起こる厄災を知っていた訳ではないだろうが、それが激動の時代を政治家として生き、首相にまで登りつめた「平民宰相」の覚悟だったのかも知れない。

矢野哲郎(やの・てつろう)平成3年、福岡県行橋市に生まれる。下関市立大学経済学部卒。大学卒業後は塾講師の仕事を行い、国語・数学・英語などの科目を担当。放課後などの時間帯を利用して学習指導を行う「子どもひまわり学習塾」の指導員として4校の小学校を担当。NGOピースボートが主催する地球一周クルーズに参加し、人種差別に関する企画やブラインドサッカーなど多様な自主企画を実施。

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