『神道DNA』を読む 危機の時こそ考えたい日本人のアイデンティティー

令和2年4月、神道国際学会理事長である三宅善信氏による新著『神道DNA〜われわれは日本のことをどれだけ知っているのだろうか』(集広舎)が刊行された。

本書は同学会の機関紙「神道フォーラム」に15年にわたって連載されたエッセイを、現在から過去に遡る「逆編年体形式」(著者)でまとめたものである。

実際にその作業を進めてみると、現在、世界を震撼させている中国初の新型感染症についても、2007年9月に『遣隋使がもたらした伝染病と神々』や2006年1月に『インフルエンザと七草粥』のタイトルで既に取り上げているなど、十数年前に「予言」していた事象が、その数年後に顕在化していることを発見したりして、極めて興味深いことであった。
(「はじめに」より)

上記で著者が示している通り、本書はグローバル化がもたらした感染症問題について、宗教学的あるいは歴史学的見識を踏まえながら、至って科学的に解説している。(三宅氏には『風邪見鶏』と題する感染症に関する近著もある)

新著『神道DNA』で扱うテーマは、雑誌連載だけあって、その時々の時事問題を導入としつつ、実に幅広い。政治、文化、生活様式、人生観など縦横無尽に展開されており、著者の知識の豊富さと一貫性のある信念には驚かされる。

教派神道である金光教春日丘教会長という肩書きももつ三宅氏は、日本神道界を代表して世界中を飛び回り、英語で神道の精神を伝える活動を続けている。単なる宗教家の枠を超えた行動家であり、思想家と呼んでも良いだろう。

私が特に考えされられた文章が、東日本大震災の4ヶ月後に書かれた記事の末文である。

東日本大震災という未曾有の国難に対して、政治は、被災地の「復旧や復興」という小手先の対処ではなく、原発問題も含めて、これを、明治維新と敗戦に次ぐ近代日本における「第三の建国」として位置づけ、(中略)従前の常識を180度ひっくり返すような新しい国づくりが求められている。それには、「新しい神話」が必要である。
(79頁/新しい国づくり神話を)

およそ9年前の文章だが、いま聴いても実に新鮮だ。本書には上記のような発想豊かな提言や警句が散りばめられている。

そのような三宅氏の思想的確信を端的に示していると私が感じたのが、次の一文だ。

数十年しか賞味期限のない、長くてもせいぜい数百年ももたない特定の国家の統治機構と、宗教・民族・言語と言った千年以上にもわたって保存されるDNAのごとき人間のアイデンティティーのどちらを尊重すべきかと問われれば、私なら迷うことなく「人間のアイデンティティーを尊重せよ」と答える
(133頁/国家主権よりも宗教・民族・言語を)

現在、「中国初の新型感染症」によってパンデミック(世界的感染爆発)が発生し、長期の外出・移動制限によって各国の経済活動が停滞するとともに、これまでの社会制度が崩壊しかねない状況に陥っている。

本書は、このような危機的状況下にこそ、日本人自らのアイデンティティーを再確認し、これからの未来を考える一助になると確信する。

なお、三宅氏は『日本DNA』と題してYoutubeチャンネルを開設し、動画による情報発信も開始した。こちらも併せて視聴されることをお勧めする。

(選報日本 編集主幹 本山貴春)

『神道DNA -われわれは日本のことをどれだけ知っているだろうか』
三宅善信・著
集広舎・刊
1,320円

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