地球一周ピースボートで「大東亜戦争肯定論」を主張した理由(3)

『僕がぼくであるために ピースボートで大東亜戦争のことを考えた』(花乱社)
著者・矢野哲郎さん(27)インタビュー
聞き手:『選報日本』編集主幹 本山貴春

Q.矢野さんにとって「自分のスタイル」とは何ですか?

「自分のスタイル」とは、「自分が好きなこと」と「自分にできること(可能なこと)」、そして「それによって自分が人に認められること」の3つが重なり合った状態のことを指します。

私個人としては、塾講師や日本語講師の仕事、あるいはピースボートの自主企画のときのように、人前で話をすることですね。あるいは教育によって人の成長を促すこと、と言えるかもしれません。

例えば算数が苦手な小学生がいたとします。それでも、きちんとした解き方や身近な具体例などを交えて教えると、今までできなかった子ができるようになります。

こうした経験は生徒にとって、単に学力アップというだけに留まりません。問題解決能力や、途中で投げ出さない粘り強さ、物事に色んなアプローチで取り組む能力といった、大人になってからも重要な能力を養うことに繋がります。

だから私の教え子たちは、学力だけではなく、挨拶をきちんとする、机の下に椅子をきちんと直す、ドアを開けたら閉める、プリントやファイルの順番や向きをそろえて提出する、といった日々の習慣や生活態度も改善されていきました。

そうした人としての成長が見られると、やっぱり嬉しいですよね。

もし「自分のスタイルを確立できない」、「どう生きたら良いかわからない」という人から相談を受けたら、その人が子供の頃から好きだったものを聞いてみて、そこから話を掘り下げるようにしています。

一見関係ないようなことでも、一つのアプローチとして、そこから話を広げると重要なテーマに繋がることがあります。

例えば私は子供の頃からゴジラシリーズの映画が好きでした。ゴジラ映画には「戦争と平和」といったテーマが隠されています。子供の頃からゴジラ映画を観ていたことが、人種差別の企画を実施して世界の真実にせまったり、色んな人と対話したりしたこと、あるいは本を出版したことに繋がったのだと思います。

このように子供の頃好きだったものは、今の自分には一見無関係なことでも、重要なテーマに繋がったりします。

ピースボート関係者の人たちの多くもそうでしたが、自分のスタイルを確立できていない人は、他人の受け売りで話をすることが多いように思います。

彼らの話は多くの場合、「自分は地球一周した」といった既成事実に乗っかるだけで、あまり話に中身がありません。

彼らの多くが、「自分は世界一周したからすごい」と思っているけど、正解じゃない。それは「世界は広い」というだけで、あなたは別にすごくない、と思います(笑)

もちろん、確固たる信念や哲学を持って意見を発信することは素晴らしいことです。でも彼らの多くは、知ったかぶりで偉そうなことをいう場合がほとんどなんですよ。もう少し勉強して欲しいものです。

また組織の中で自分のスタイルを確立するというのは、現実的に難しいこともあると思います。そういう場合は、敢えて自分の思ったことを正直に言うというのも、一つの手ではないでしょうか。

例えば会社など、自分が所属する組織にとって都合の良いことだけをマニュアル的に話すよりも、良い面も悪い面も含めて率直に伝える方が相手も信頼してくれるものです。

Q.矢野さんの中で、ご自分の経験と日本の近代史について、繋がるものはありますか?

私はブランドサッカーを何度か体験したことがあります。サッカーは世界中で最もプレーされている球技ですが、そこから派生したブラインドサッカーは、人種や視覚障害の有無も関係なく、立場を超えてプレーすることができます。

そしてプレー中にふと思い出したことがあります。それは世界で初めて国際機関に人種差別撤を訴えたのが、私の祖国・日本だったということです(人種差別撤廃提案については、拙著に詳しく書いています)。

かつて日本人が人種を超えて平等な世の中を作ろうとしたということと、自分がいまブラインドサッカーを通じて色んな人と接していこうとしていることがリンクしていることに気づいて、感動を覚えました。

それを踏まえた上で言うのですが、時々見受けられる、「外国人(特に中韓の人々)よりも、日本人の方が優れている」というような考えは良くありません。

私は2016年12月に福岡県の宗像市で開催された、「日韓ブラインドサッカー親善試合」を観戦しに行きました。試合後にはブラインドサッカー体験会がありました。

この時はブラインドサッカー韓国代表の選手やサッカークラブに通う児童たち、地元の視覚障害者の方など、国籍や年齢、障害の有無を超えて交流できて、大切な思い出になっています。

昨今、相手が中国人だから、韓国人だから、という表面的なことで差別する流れがままあると思いますが、非常に良くないことです。

かつて白人の、歴史に残る偉大な哲学者や科学者の中には、「いかに有色人種が劣っているか」ということを、「科学的」に論証して、自分の理論体系に盛り込んだ人が何人もいます。そんな愚かな流れに日本人が乗るべきではありません。それでは偉大な父祖たちへの冒涜となってしまいます。

もし本当に日本の国を愛しているのであれば、先人の思いというものを大切にして欲しいと思います。私たちの先人は人種平等の社会を作ろうとしたのですから、それを見習うべきではないでしょうか。

私は中韓の人々を無条件に甘やかせ、と言っているわけではありません。是々非々で、適切に接していこうと述べているだけです。

また、他人の言動を表面だけで評価・判断しない習慣を作ることが大切です。

例えば、これは若い人も高齢者も、年代関係なくそうなのですが、「自分を批判する人は悪い人で、褒めてくれる人は良い人だ」と思ってしまう。意見が違うというだけで、相手を憎んでしまう傾向が強い。非常に表面的で、短絡的な考え方です。

例えば、メガネをかけている人は真面目な良い人で、髪の毛を染めている人は怖くて悪い人だ、と言ってしまうようなものです。実際にはそんなに単純ではありませんよね。

私は表面がどうでもいいと言っているわけではありません。言葉遣い然り、身だしなみも然りですが、表面的なことも大切です。しかし、それはあくまで一つの要素でしかありません。多面的なアプローチで物事を判断する姿勢が重要です。

例えば、ピースボートのクルーズでは、「在日朝鮮人問題」、「同和問題」、「LGBT問題」に関する企画がありました。しかしこれらの企画が、問題を解決するのに有効かは、大いに疑問です。

例えば、「在日朝鮮人問題」企画は(北朝鮮系の)朝鮮学校に通っていた在日3世の方が行なっていました。この方は「日本人と仲良くしたい」と言っていました。

それで「朝鮮人は日本人から差別を受けてきた」と言うわけですが、日本人が(敗戦後の)引き上げに際して朝鮮人から迫害を受けたことには触れませんし、日本統治時代にインフラを整備したことや、ハングル文字を普及させたことも言いません。

結局は、主張が偏っているわけです。そして気心が知れた人や、とくに歴史問題に詳しくない人など、自分にとって都合がいい人とだけ話をする。

しかし自分たちとは考えの違う人々とも対話しないままだと、いつまで経っても、問題解決はできないと思います。そしてピースボートが本当に素晴らしい団体になることもできないのではないでしょうか。

「LGBT問題」の企画でも、当事者の方たちが話をしてくれました。宗教や文化の問題で苦労されてきたこと、しかし最近は世の中から認められるようになってきたことなど、非常にわかりやすかったし、感銘を受けたこともありました。

しかしながら、ここで必ず出るのが、「同性婚を認めるべき」と言う主張です。冷静に考えてみると、同性婚反対論者が必ずしも同性愛者差別主義者かというと、決してそうではありません。同性愛と同性婚は、必ずしもイコールではないからです。

同性間での恋愛というのは、あくまで当事者同士の個人的なことです。しかし同性婚となると国の制度であり、法律的な観点の問題になります。

また仮に同性婚を認めるのであれば、重婚や近親婚も認めるべきではないでしょうか。実際、欧州には兄妹婚を認めている国もあります。

さらに極端なことを言えば、犬や猫といった動物や、車やギターなどの物体と結婚したいという人も出てくるかも知れません。また同性婚と重婚と近親婚をすべて認めれば、一人の男性が三人の女性と結婚して、二人の男性とも結婚して、自分の妹(や弟)とも結婚することが可能になります。

さらにその結婚相手の人々も複数の男女や兄妹とも結婚する、というようなことになれば、本当に収拾がつかなくなります。多様性はもちろん大事ですが、かといって法的規制をどんどんなくしてしまえば、混乱を招くことになります。

例えばこう考えてみると、同性婚に反対する人が、必ずしも差別者とは限らないはずです。反対派は反対派で、良識ある考え方をしている人もいるはずです。

しかしピースボートクルーズにおいては、同性婚に賛成する人は良い人で、反対する人は差別主義者の悪い人だ、と一方的に拠っていました。

さらにピースボートは、LGBT問題を「私たちはLGBTを支援しているので素晴らしい団体だ。だからピースボートを批判する人たちは差別主義者の悪い人なんだよ」と、自己正当化に利用しているように感じました。

もし私がLGBTの当事者だったなら、「理解を広めてくれてありがとう」という感謝よりも、「私はあなたたちが良い人ぶるための道具じゃない」という憤りの方が勝っていたかも知れません。

若い参加者のほとんどは、こうしたピースボートの一方的で独善的な主張を鵜呑みにしてしまっていました。船の中が閉鎖空間である、ということも大きいと思います。

Q.今後、矢野さんは世の中に対してどのようなことを訴えていきたいですか?

人々が他人に流されず、自己を確立できる世の中にしていきたいと思っています。

しかし結局、自分のスタイルは自分で確立するしかありません。そのため私が誰かに対して、ああしなさい、こうしなさいと言うのは良く無いです。

例えば、私はブランドサッカーの話をよくします。でも私の話を聞いてくれた人が、必ずしもブラインドサッカーをやってみる必要性はありません。他にも障害者スポーツはありますし、今までやったことがない普通のスポーツを新しく始めてみるというのも一つの手です。

私は自分の意見を人に押し付けるつもりはありません。私の話は、ひとつの参考例として受け止め、相手が自分なりに比較検討して、何かにチャレンジしたり、今やっていることを続けていったりしてくれたらいいと思っています。

また人が「自分のスタイルを確立する」ために必要なことは、やはり本を読むことではないでしょうか。

いまは年齢に関係なく、本を読む人が少なくなっています。でも私がクルーズ中に色んな場所に行き、色んなことを理解でき、色んな人と対話することができたのは、本を読んでいたからです。

本を読むことは、単に情報を得るということだけではありません。自分なりの物の見方や考え方を確立すること、情報を処理する能力や、一つの視点にとらわれず、物事を多角的に追求する能力を培う作業だと思います。

本を読まない人は、10の情報を得ても1のことしか理解できません。しかし本を読む人は、1の情報で10のことを理解できるようになります。単純計算で言えば、本を読む人は読まない人に比べて100倍豊かな人生を送れるというわけです。

だから多くの人に本を読む習慣を作って欲しいと思っています。ただそれだけのことで、人生が大きく変わります。

読む本は、自分が興味のある本、とっつきやすい本でいいと思います。例えばお菓子が好きな人なら、お菓子の本を一冊読み始めてみる。そこから材料の物流とか経済の話に繋がるかも知れないし、文化や食べ物が人体に与える影響など科学的な話に繋がるかも知れません。きっとそこから自分の世界が広がっていきます。

私は本を選ぶとき、ネットの書評サイトを参考にしています。書店にも行きます。Amazonも良いですが、関連商品として似たような本しか出てこないので、世界が偏ってしまいます。その点、書店に足を運べば色んな本があります。

ちなみに一冊の本を集中して読むよりも、色んなジャンルの本を少しずつ、その時の気分に応じて読むことが多いですね。複数の本を同時並行で読む。疲れたら気分転換で他の本を読む。こうすると、直接関係ない本でも、意外な化学変化が起こることがあります。

例えばいま、『悪者見参:ユーゴスラビアサッカー戦記』(文春文庫)と『オスマン帝国の解体』(講談社学術文庫)を同時並行で読んでいます。

前者にはオスマン帝国の話なんてほとんど出てきません。しかしユーゴスラビアやバルカン半島の歴史的背景は、オスマン帝国のことを知らないとわからない。

おそらく、この2冊を同時に読んでいる人は他にそうそういません。この2冊を同時並行的に読むことで、自分の世界観が広がります。このように直接関係ない情報を、敢えて自分なりに織り交ぜることで、新しい世界が広がるのです。

もちろん、実際に現地に行くことも素晴らしいことだと思います。私もクロアチアやモンテネグロなど旧ユーゴスラビアの国に行ったことがあります。だからこそ、この2冊の本に書いていることをよく理解できたと思います。

そのようなことを通じて、自分なりのスタイルを確立できるのではないでしょうか。(了)

矢野哲郎(やの・てつろう)/平成3年、福岡県行橋市に生まれる。下関市立大学経済学部卒。大学卒業後は塾講師の仕事を行い、国語・数学・英語などの科目を担当。放課後などの時間帯を利用して学習指導を行う「子どもひまわり学習塾」の指導員として4校の小学校を担当。NGOピースボートが主催する地球一周クルーズに参加し、人種差別に関する企画やブラインドサッカーなど多様な自主企画を実施。

『僕がぼくであるために ピースボートで大東亜戦争のことを考えた』
出版社:花乱社 (2018/6/28)
内容紹介:
自分のスタイルを確立せよ!
色んなことを語ろう,学ぼう,世界を旅しよう。
ブラインドサッカー,尾崎豊・裕哉父子,ピースボートで出会った仲間たち,そして世界で初めて人種差別撤廃を訴えた祖国・日本から僕が学んだ人生のヒントとは?


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