ノーベル平和賞・劉暁波とその妻の悲劇「長雨が続く中の赤い雨傘」

ノーベル平和賞受賞者で、中国民主化の英雄と呼ばれる劉暁波氏が死去して、まもなく1年になる。そして劉暁波氏の未亡人である劉霞氏は、いまなお中国共産党当局の厳しい監視下に置かれている。

劉霞氏自身は民主活動家ではなく、芸術家である。夫と同じく詩人であり、画家・写真家としても才能を発揮してきた。今年5月、著名なノーベル文学賞作家などが劉霞氏の解放を求め、彼女の詩を朗読する動画を公開した。

国際社会は、中国共産党政府に対し、不当な人権弾圧を止めるよう圧力を強めている。5月24日に訪中したドイツのメルケル首相は中国の李克強首相に劉霞氏の解放を求めた。中国側は対話に応じる構えを見せたという。

実際のところ、劉霞氏の軟禁は同国の国内法に照らしても法的根拠がない。劉霞氏が中国当局の監視下に置かれたのは、夫の劉暁波氏が2010年に獄中でノーベル平和賞を受賞して以後のことである。

劉暁波氏と劉霞氏の出会い

劉霞氏と出会ったのは北京の文学サロンだった。二人は詩を通じて意気投合する。やがて劉暁波は民主活動家として著名になる。以下、『劉暁波伝』(集広舎)から引用する。

劉霞は「6・4」の前の天安門広場は非常に混乱しており、彼女は劉暁波に近づけず、大勢の中に小さな姿を見ることができただけで、首が痛くなったと言った。この情景を、劉霞は後に詩にした。
「私はあなたと一言も交わせなかった
 あなたは時の人になってしまった
 みなと一緒にあなたを仰ぎ見ていたら
 くたびれ果てた
 人の群れから逃れ
 タバコを吸い
 空を見上げていた。」

「私、国家の敵に嫁ぐのよ!」

劉暁波氏と劉霞氏はやがて恋人関係になるが、劉暁波氏が天安門事件6周年の「呼びかけ」を起草したことで軟禁・投獄される。劉霞氏は北京から大連に通い、劉暁波氏への差し入れを続けたが、家族でないために面会を許されなかった。そしてついに、結婚を決意する。

再び、『劉暁波伝』(集広舎)から引用する。

当局はこのようないやがらせによって劉霞の意志をくじこうとしたのだが、逆に彼らの結婚の決意を固めさせ、婚姻への足取りを速めることになるとは思いもよらなかった。劉霞は関係部門に結婚の申請を提出した。
「私、国家の敵に嫁ぐのよ!」
彼女の、あの痛めつけられた葦のようにひ弱な体のどこに、こんなに不屈な魂が隠されていたのだろう!

この劇的な「獄中結婚」により、劉暁波氏と劉霞氏は合法的に面会できるようになった。劉暁波氏は政治犯として度々投獄されるが、劉霞氏が妻として献身的に夫を支える様子が、『劉暁波伝』には丹念に描かれている。

獄中から妻に宛てた手紙

しかし2010年に劉暁波氏がノーベル平和賞を受賞したことで劉霞氏は獄中の夫を見舞う自由を失う。劉霞氏は自宅に軟禁され、買い物もできなくなった。友人との通信すら禁止され、その状態は夫が獄死しても続いている。

劉暁波氏は獄中から妻に宛てた手紙にこう書いた。

困窮すればするほど楽観的になり、外部が暗黒であればあるほど心の中は明るくなる。例えば、君の微笑は長雨が続く中の赤い雨傘だ。

この仲睦まじい夫婦の悲劇は、夫が亡くなって1年が経とうとする今日も続いている。このような人権侵害は、中国共産党政府による圧政の、氷山の一角に過ぎない。

世界第2位の経済大国の陰惨な横顔を、隣人である私たちはよく見つめておくべきだろう。

本山貴春(もとやま・たかはる)/昭和57年生まれ。独立社PR,LLC代表。戦略PRプランナー。『選報日本』編集主幹。北朝鮮に拉致された日本人を救出する福岡の会副代表。福岡市議選で日本初のネット選挙を敢行して話題になる。大手CATV、NPO、ITベンチャーなどを経て起業。

『劉暁波伝』(集広舎刊)
余傑 (著), 劉燕子 (編集, 翻訳), 横澤泰夫 (翻訳)
度重なる拘束や監視にもかかわらず中国にとどまり続け、民主化を訴えた劉暁波とはどのような人間だったのか?! 最後まで彼と行動を共にした若手知識人作家による劉暁波の人生録。

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