日本人が知らないチベットの真実!「ダライ・ラマ声明」の半世紀とは

チベット亡命政府のダライ・ラマ法王が過去51回にわたって世界に発表した声明文を1冊にまとめた『ダライ・ラマ声明1961-2011』(集広舎)が出版された。法王の東アジア代理人である在日チベット人・ルントック氏に、この本にかける思いを聞いた。

ダライ・ラマ法王日本代表部事務所代表 ルントック氏 独占インタビュー
聞き手:独立社PR,LLC代表 本山貴春

Q.『ダライ・ラマ声明1961-2011』を出版された背景を教えてください

私達は毎年3月10日、ダライ・ラマ法王の声明を聴いて来ました。法王のお言葉ほど、私達チベット人の力になるものはありません。

今回ありがたいことに、法王の声明文が日本語でまとめられ、出版されました。転生者であるダライ・ラマがチベットの政治的・精神的指導者となられて360年。この本では1961年から(法王が政治から引退する)2011年までの全ての声明が集約されています。

チベットの国を失ってから現在までのダライ・ラマ法王の思い、チベットと中国のやりとり、チベット国内の現状、インドにいるチベット難民の現状、それら全てが、この一冊を読めばわかるようになっています。チベットの真髄は全てこの中にあります。

ルントック氏(太宰府天満宮にて)

1961年から70年ごろまで、私達はチベットの独立ばかりを主張していました。しかし74年以降は、中国との対話を実現するために模索を始めます。

そして80年代、毛沢東の時代が終わって鄧小平が中国指導者になり、私達はダライ・ラマ法王の兄上を使者として北京に送りました。その会談において、「チベット独立」を抜きにすれば亡命政府と北京政府が交渉できることになったのです。

それから2008年くらいまで、チベット人の出入国が自由になりました。その間、毎年2500-3000名くらいのチベット人が出国しています。中国統治下のチベット国内では仏教の勉強もできませんので、多くの人がインドの僧院に移りました。

今ではインドに250軒ほどの僧院尼寺があり、3万人近い僧侶が修行しています。殆どがチベット国内から移ってきた僧侶です。

しかし2010年ごろから、チベットから中国政府の統制がかつてなく厳しくなり、出国できなくなりました。入国も禁じられてしまいました。チベット国内での移動すら自由ではありません。無許可で移動すれば刑務所に入れられます。

2009年以降、合わせて151人のチベット人が焼身自殺によって抗議していることが、事実を物語っています。彼らの訴えは例外なく「ダライ・ラマ法王のチベット帰還」と「チベットに自由を」です。

現在、チベットには見せかけの自由しかありません。チベットの文化を守る、仏教を信仰する、お寺を再建するなど、全てに制限をかけられています。こういった自由がないために、大勢の若いチベット人が中国政府に焼身抗議しているのです。

Q.『ダライ・ラマ声明1961-2011』の見どころを教えてください

チベットには2000年の歴史がありますが、国を失い、数十万人が難民となったのは初めてです。1951年に中国が強制的に条約を結んだことで、法王始め8万人ほどの人がインドに亡命しました。現在インドには13-14万人ほどのチベット人が生活しています。そんな私達の訴えがこの中にあります。

チベット亡命政府ができて60年ほどになりますが、この間、私達がどのように生活してきたか、かつて経験しなかった難民の苦労が記録されています。ダライ・ラマ法王の言葉というのは、私達チベット人にとっては最高のメッセージです。チベット人が何を書こうが、何を言おうが、ダライ・ラマ法王の声明文に勝るものは無いのです。

日本だけでなく世界各国で、中国政府によるデマの方が浸透しています。この本を読むことで、チベットの真実が何なのかを理解していただくことができます。チベットの真実をお伝えするのに、法王のお言葉に勝るものはありません。

ルントック氏(東長寺にて)

ダライ・ラマ法王は毎年のように来日していますので、20-30年前に比べると日本国内でのチベットに対する関心は高まっています。それでも、多くの日本人はチベットの現状を知りません。

中国政府もチベット人を動員して世界各国で広報イベントを行っていますが、これは中国寄りのデマを広めるための活動です。一人でも多くの日本人にチベットの真実を知ってもらいたいと思います。

また、『ダライ・ラマ声明1961-2011』の巻末にはダライ・ラマ法王の写真を多数掲載しています。法王が転生者として認定された時から、ノーベル平和賞受賞時のもの、そして最新までの貴重な写真集です。他国で出版した声明集には掲載しておらず、日本語版のみの掲載です。

Q.毎年の「ダライ・ラマ声明」はどのようにして書かれたのですか?

まず、法王がチベット語でおっしゃったことを秘書達がメモします。それを専門家の助言を受けながら文章としてまとめ、法王に提出します。それに法王が再度色んな言葉を足されます。そのような作業を3ヶ月ほどかけて行い、最終的にチベット語と英語で発表されます。

毎年出される3月10日の声明は一年で最も重みのある声明です。3月10日はチベット人が国を失い、国を取り戻すために立ち上がった日(※)だからです。この声明には全チベット人の知恵が結集されています。

※チベット民族蜂起記念日:1959年3月10日に「チベット民族がチベットの首都ラサにおいて中国共産党の抑圧に対する平和蜂起を行なった事件に対する記念日である。毎年3月10日、世界各地の亡命チベット人のコミュニティーや北米・ヨーロッパ、日本、インド等の各国で記念行事が行われている。

世界中に散らばっているチベット人の各国代表者が各地の情勢を集約し、それら世界情勢を分析した上で作成します。そして声明文の最後には必ずインド政府への感謝の言葉を述べています。

Q.今後チベットに対して、どのような支援を望みますか?

まずはチベット問題を知ってもらうことです。成長著しい中国といえども、世界の一部に過ぎません。世界情勢の中では、中国のわがままは許されないのです。チベット仏教の教えでは、「相手を尊重して初めて関係が成り立つ」とされています。そういう意味では、誰かが中国にモノを言って、中国の暴走を止めなくてはなりません。

チベットのために、中国に強く言って欲しいわけではありません。ただチベットのことを理解し、中国のことを理解し、その上で自国のためにどうすべきかを判断いただければ結構です。

Q.今後の展望を教えてください

最近、中国人の中でもチベット仏教に関心を示す方が増えています。中国国内の仏教徒は3-4億人いますが、その中でチベット仏教に関心を示す方が多いのです。この中から、いつか中国政府を担う方が出てくれば、チベット問題は改善すると思います。

また、中国人は国内では政府批判ができませんが、海外に出て、各国と自国を比較できるようになってきました。それによって徐々に中国国内に民主主義が広まれば、世界にとっても中国にとっても良い時代が来るのではないでしょうか。

▽ダライ・ラマ法王日本代表部事務所公式サイト
www.tibethouse.jp

『ダライ・ラマ 声明 1961-2011』(集広舎)
著者:ダライ・ラマ十四世 テンジン・ギャツォ
訳者:小池美和
判型:四六判/並製/350頁
定価:本体1,852円+税

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