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【小説】シールド・ソルジャーズ 第一話

(執筆者 狼堂清明)
 寒くて暗い闇の中で、じっと耐えていた。
 もう何十時間も、ここにこうして居る気がする。何もせず、ただ待っていると、脳髄が勝手に色々なことに思考を巡らし、身体の方が振り回される。とにかく震えが止まらない。こんな日は本当ならば、温かい炬燵に入ってビールでも飲みながら、好きな映画でも観ているべきなのだ。「だのに何故か僕は、こんな田舎の、暗い波止場で、凍えながら待っている。」後悔の二文字が、チラリと頭を掠め、それを何度打ち消したろうか。空腹はとうに飛び越えて、腹も鳴らなくなった。待っているだけで随分疲れた。
 眠気と戦っているその時、久藤は小さな悲鳴を聴いた。それは悲鳴というよりも、ごくごく短い呻き声のような音だった。すぐに暗視ゴーグルを構え、無音で移動する。レーダーは百メートルほど先に熱反応を示している。敵は三人だ。一人が周囲を警戒し、二人掛かりで大きな袋を運んでいる。袋がうねるように動いていかにも運びにくそうだ。久藤は一気に五十メートルまで距離を縮めた。敵は気づいていない。周囲に音はない。ただ波の音だけが、空気を震わせている。今夜は風もない。凪だ。三人の人影は、用心深くテトラポッドを越えようとしている。久藤は計画通り、消音銃を構える。照準は運搬者の脚だ。狙いながら、三十メートルまで距離を詰める。撃つ。敵の一人が崩れる。警戒者が振り向いて舌打ちする。二発目は彼の脚だ。甲高い悲鳴を一瞬上げて、テトラポッドの深みに落ちる。残った運搬者の一人が、大きな荷物を抱えて呆然としている。久藤は敵から三メールのテトラポッドに飛び移り、催涙弾を放った。重要なのはここからだ。

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