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マスメディアの報道ではわからない ミャンマー「ロヒンギャ問題」の真相とは!?

いま国際社会でミャンマーの「ロヒンギャ問題」が注目を集めている。しかしこの問題には、現地の実情とかけ離れた「誤解」があるという。問題の真相を、アジア問題専門家の石井英俊氏(NPO法人夢・大アジア理事長)が明かした。

(聞き手:ビデオブロガー ランダム・ヨーコ氏)

Q.いま話題の「ロヒンギャ問題」とはいったい何なんでしょう?

実は、「ロヒンギャ問題」という言葉自体が、すでに「アウト」なんです。

その理由を説明する前に、まずは基本的なことをお話しします。

いま報道で言われている「ロヒンギャ」とは、ミャンマーのラカイン州(バングラディッシュに近い西部の州)に住んでいるイスラム系の人々のことです。

ミャンマーは、もともと仏教の国で、国民の9割が仏教徒と言われています。少数民族の中にはキリスト教を信仰している人たちもいます。

イスラム教を信仰する「ロヒンギャ」は、100万人くらいいると言われています。「ロヒンギャ」たちはミャンマー国内に住んでいるのですが、ミャンマー国籍を持っていません。存在自体が認められていないからです。

特に軍の弾圧が激しく、村が焼き払われ、虐殺されています。その結果、100万人のうち40万人が難民として隣国のバングラディッシュに逃れています。

ただ、その100万人という数字も、はっきりしたものでありません。一説には70万人とも140万人とも言われており、「40万人の難民」という数も確実な数字ではありません。

Q.そもそもミャンマーにいるのに国籍が無いのはなぜでしょうか?

不法移民という扱いだからです。

現在のミャンマーという国は、第二次世界大戦の後、イギリスの植民地が独立してできた国です。ミャンマー、パキスタン、インド、バングラディッシュ、マレーシア、シンガポールは全部イギリスの植民地でした。

最近までミャンマーでは軍事政権が続いていたために、「悪い軍事政権がかわいそうな少数民族を弾圧している」「だからノーベル平和賞をもらったアウンサンスーチーが国の指導者になったらこの問題は解決するだろう」と期待されていました。

しかし私は「アウンサンスーチーが指導者になってもこの問題は解決しない」と見ていました。

なぜかというと、「軍事政権だからロヒンギャをいじめていた」わけではなく、ミャンマー人はみんな「ロヒンギャ」を認めていないからです。これは軍事政権だろうと、民主派だろうと、その他の少数民族も含め、みんなその存在を認めていないのです。

実はミャンマーでは「ロヒンギャ」という呼称を使うこと自体がタブーです。日本で例えるなら、安保法制を「戦争法」と呼ぶ人は安保法制反対派だとすぐわかるようなものです。

では、ロヒンギャの人たちをミャンマー人が何と呼ぶのかというと、「ベンガル人」です。ベンガル人とは、ベンガル地方に住んでいる人という意味で、ベンガル地方は今でいうバングラディッシュのことです。

ミャンマー人は「ロヒンギャ」を「バングラディッシュの人々」とみなしています。

バングラディッシュの人たちが不法移民としてミャンマーに来ているだけなので、ミャンマー人にしてみれば、「バングラディッシュに帰ったら?」という感覚です。

「ロヒンギャ」という呼称を使うこと自体が、「ミャンマー国内にロヒンギャという少数民族がいることを認める」ということを意味します。

歴史的に見ると、ラカイン州にはアラカン族という人たちが住んでいました。そこに後から移り住んで来たのが、「ロヒンギャ」と呼ばれるベンガル人たちです。「ロヒンギャ」を認めてしまうと、アラカン族の人たちの権利はどうなるんだと。

大前提の認識がずれているために、「アウンサンスーチーは自由と人権の味方の筈なのにどうなってるんだ」と批判され、「ノーベル平和賞を剥奪せよ」という話まで出ています。

実際に剥奪はできないのですが、ノーベル賞委員会は「今の彼女はノーベル平和賞にふさわしくない」と言っています。

いま国際社会は、アウンサンスーチーを含めてミャンマーが悪い、と徹底的に叩いている状態です。だから今回、アウンサンスーチーは国連総会に行っていません。「ロヒンギャ問題」はミャンマーにしてみればフェイクニュースなんです。

「国際社会は偏った情報で判断しているじゃないか」とミャンマー側は猛反発しています。

左 ランダム・ヨーコ氏/右 石井英俊氏

さらに、日本ではまだ報道されていませんが、イスラム過激派の問題があります。私は今年の5月から警告していたのですが、イスラム過激派によるテロが現実のものになりつつあります。

実はパキスタンのタリバンが、「ロヒンギャ」と呼ばれる人々に武器を流して、武装闘争を煽っているのです。それだけでなく、一部をパキスタンに連れて行って軍事訓練も行なっています。

先日はアルカイダが、「ミャンマーにおいてジハード(イスラムの聖戦)を行うので、イスラム教徒は結集せよ!」と声明を出しました。

さらに、ISも入り込んで来ています。彼らも仲が良くないので、イスラム過激派どうしの衝突が起きる可能性もあります。

彼らイスラム過激派から見れば、ミャンマーは良い「土壌」なのです。「ミャンマーには異教徒(仏教徒)から弾圧されている悲惨な境遇のイスラム教徒がいるので、正義のために戦おう」という大義ができるからです。

「ロヒンギャ」と呼ばれている人たちにしても、先が見えない中で追い詰められて、「もう戦うしかない」「しかも武器をもらえる」と。それで戦っているわけですが、出口は見えません。

今後、ミャンマーと「ロヒンギャ」はイスラエルとパレスチナのような関係になると思われます。パレスチナの人々も行き場がなく、ずっと貧しい暮らしをしています。そして貧しいが故に、テロの温床になっているわけです。

イスラエル政府はパレスチナのテロをある程度抑えることができていますが、ミャンマー政府は抑えることができず、イスラエル以上にテロが頻発する可能性があります。

それどころか、「ロヒンギャ」はアジアにおけるテロの供給基地になることも考えられます。イスラム過激派の一大拠点になるかも知れません。

スーチー政権ができたときに、ミャンマーは「アジア最後のフロンティア」と持て囃され、多くの企業が進出しましたが、必ず大変なことになります。

いまはラカイン州の中だけに収まっていますが、これから爆弾テロなど、ミャンマーの各都市に飛び火する可能性があります。日本企業も進出を控えた方が良いでしょう。

フィリピンのミンダナオ島にもISが入り込んで、イスラム過激派の拠点になってしまっていますが、中東で行き場がなくなった彼らイスラム過激派が、アジアの「力が弱い国」に入り込み、生き残りを図っているわけです。

東南アジアだけでなく、ウイグル(東トルキスタン)の方にも入って来ています。中央アジアに「第2イスラム国ができる」という噂もあります。アジアにイスラム過激派が勢力を伸ばしつつあり、非常に危険な状況です。

Q.マスコミの報じる構図を鵜呑みにするのではなく、このような背景を知っておく必要がありますね。

さらに、注意すべきなのが中国の動向です。

西側諸国は国連でも「民族浄化」という言葉まで使ってミャンマーを糾弾し、国際的な圧力をかけていますが、アウンサンスーチーは絶対に「ロヒンギャ」を認めることはできません。そんなことをすれば、政権が持たなくなります。

ところが中国だけが、「ミャンマーへの内政干渉はしません」と言っています。自分たちだけ良い顔をして、ミャンマーを仲間に引き入れようとしているわけです。「一帯一路で仲良くしましょう」と。

この構図は軍事政権の時代と同じです。国際社会はアウンサンスーチーにノーベル平和賞を与えて軍事政権に圧力をかけていました。その結果、軍事政権は中国と仲良くなってしまいました。

やっと、スーチー政権になって、国際社会はミャンマーへの経済制裁をやめましたが、また「ロヒンギャ問題」で圧力をかけています。実際に、スーチー政権と中国政府は結びつきを強めつつあります。

中国にして見れば、ミャンマーはインド洋への出口となります。中国はパキスタンにも「一帯一路」の連携を呼びかけていますが、同様に中国にとって地政学的に重要な地域なのです。

Q.ミャンマーと日本の関係は?

基本的に良いです。

それは軍事政権時代も同じだったのですが、欧米が経済制裁をかけてミャンマーを締め上げるので、「日本も付き合え」と、引きずられる形で距離をおいていました。いまでも「ロヒンギャ問題」が報道され、日本国内のミャンマーへの印象は悪くなっています。

中国が「ロヒンギャ問題」を批判しないのは、自分たちもチベットやウイグルで虐殺しているので他人のことを言えない、という側面もあります。「ロヒンギャ問題を言わないから、ミャンマーもチベット問題やウイグル問題を言わないでね」と。

欧米などの国際社会は「ロヒンギャ問題」でミャンマーを批判する割に、「チベット問題」などを中国に言いません。言いやすい国にだけいう、欧米の浅はかな「正義」です。

偏った情報で一方だけを断罪するのは間違いです。まずは、状況を正確に把握することが重要です。

▽このインタビューは動画でもご覧いただけます。

石井英俊(いしい・ひでとし)特定非営利活動法人夢・大アジア理事長アジア会議事務局長。九州大学卒業後、塾講師、経済団体職員、選挙出馬を経て、現在、アジア問題専門家として情報発信している。平成29年10月、月刊「正論」に『香港にも慰安婦像が建っている理由』発表。

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