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PR動画がエロすぎて炎上?本当は怖いポリティカル・コレクトネスとは

最近、ネット上のPR動画を巡る炎上騒ぎが相次いでいる。動画の内容が「エロすぎる」ことで、「女性蔑視だ」「品位がない」などと批判され、制作者が謝罪や動画削除に追い込まれているのだ。

以下、最近あった「エロすぎる」炎上動画の事例である。

▽『うなぎのうな子』制作者:志布志市(鹿児島県)/PR目的:ふるさと納税促進・うなぎ養殖のブランディング(平成28年6月)

▽『頂(いただき)』制作者:サントリー/PR目的:新発売ビール「頂」販促(平成29年7月)

▽『涼・宮城の夏』制作者:宮城県/PR目的:観光客誘致(平成29年8月)

これらの動画は、公開直後から批判が殺到した。そしてその批判の方法が、動画のURLをSNS などでシェアしつつ、批判コメントを投稿する形式だったため、自ずと動画再生数も激増することになった。

これはネット社会特有の「炎上マーケティング」と呼ばれる手法だ。SNSなどで爆発的にシェアされる現象をネットスラングで「バズる」と呼ぶことがあるが、炎上マーケティングでは批判を込みで「バズらせる」ことを狙ってコンテンツを公開する。

上記の動画の全てが炎上マーケティングの意図を持っていたかどうかは不明だ(状況的にはその可能性が高い)が、結果的にかなり高い宣伝効果があった。例えば『うなぎのうな子』を配信した志布志市のふるさと納税は前年比3倍になっている。

そもそも「エロすぎる」などと言われると見たくなるのが人間の心理というものだ。心理学の用語で「カリギュラ効果」と呼ばれる心理現象がある。

カリギュラ効果とは、禁止されるほどやってみたくなる心理現象のことである。一例としては、「お前達は見るな」と情報の閲覧を禁止されると、むしろかえって見たくなるなどの心理が挙げられる。ローマ帝国の皇帝カリグラをモデルにした1980年のアメリカ・イタリア合作映画『カリギュラ』が語源で、過激な内容のため、ボストンなどの一部地域で公開禁止になったことで、かえって世間の話題を惹いたことにちなむ。(wikipedia)

しかし実際に見てみると、それほどエロくなかったりする。確かに自治体が作ったと聞けば、お堅い役所のイメージからはかけ離れていて驚くかもしれないが、いかにも品行方正で無難な動画を公開したところで誰も話題にしない。

総務省の統計によると、国内の流通情報量は平成13年から23年にかけて約2倍になっている。その中で、インターネットによる流通情報量だけ見ると70倍以上だ。しかし人が処理できる情報量は当然変わらない。

(参考:企業マーケティング担当が知らないとまずい、世の中の流通情報量の話)

つまり、世の中に情報が溢れすぎて、届けたいターゲットに情報を届ける(宣伝する)ことが非常に困難になっているというわけだ。従って、「できるだけ多くの人に届けたい」と考えると、今回のような「炎上マーケティング」に走ることになる。

そのようなマーケティング手法に、確かに批判はあるが、結論から言うと仕方ない。これは「やった者勝ち」の世界だ。「エロ」はもっとも安易な炎上マーケティングだが、同様の手法は今後も繰り返され、批判者も含めて踊らされることになるだろう。

それよりも注意すべきことは、このような炎上マーケティング批判の結果として、表現の規制が強まることではないだろうか。

上記の動画3本を見ても、性的表現はあくまで暗喩的であり、女性の裸体を露出しているわけではない。その表現についても控え目なもので、それを「性的で露骨」と思うかどうかは受け取り手次第だ。「性的か否か」は視聴者の想像力にかかっている。

動画の批判者は、「私はこの動画を見て性的連想をするくらい想像力豊かです」と言っているに等しいのだ。

もっとタチが悪いのが、「女性蔑視だ」と言う類の批判である。こういった批判のあり方を「ポリティカル・コレクトネス」という。

ポリティカル・コレクトネス(英: political correctness、略称:PC、ポリコレ)とは、日本語で政治的に正しい言葉遣いとも呼ばれる、政治的・社会的に公正・公平・中立的で、なおかつ差別・偏見が含まれていない言葉や用語のことで、職業・性別・文化・人種・民族・宗教・障害者・年齢・婚姻状況などに基づく差別・偏見を防ぐ目的の表現を指す。(wikipedia)

ポリティカル・コレクトネスは1980年代に米国で始まった政治運動で、当初は言葉の言い換えが行われた。それまでは警官を英語で「policeman」と呼んでいたが、ポリティカル・コレクトネスによって「police officer」と言い換えられるようになった。「man」が女性差別だと言うわけだ。

わが国においても「スチュワーデス」が死語になり、「フライトアテンダント」と言い換えられ、看護婦(看護士)は看護師になった。

これら「言葉の言い換え」は女性蔑視・女性差別の解決に繋がるのか否か、検証もなく、ただ言葉狩りが横行した。言語にも歴史がある筈だが、言語の歴史的背景を無視して、言葉が次々に中性化していった。

そして今や、動画表現にまでポリティカル・コレクトネスの猛威が迫っているというわけだ。その批判の文脈において、何を持って「女性蔑視」というのか、明確な定義はない。

ことは「性」だけではない。

例えば白人の子供が日本風の化粧をして、和服に似た衣装でままごと遊びとしている個人的な動画が「人種差別だ」と批判されて炎上した例もある。わが国でも、白人風の「つけ鼻」をしたTVCMが批判を浴びて放映中止に追い込まれた。

(参考:米少女の「日本風」写真が炎上。なぜ「文化の盗用」騒ぎが続くか?)

このような、人種や民族的特徴を他者が模倣することを「文化の盗用」だとか「人種差別」といって非難するのである。もちろん、女性差別は良くないし、人種差別はもっての他だ。しかしこのような表現を封じることと、差別解消は何の関係もない。

行きすぎたポリティカル・コレクトネスは、表現の自由を制約することになる。表現の自由を制約することは、言論の自由、思想信条の自由の制約に、容易に道を開く。その結果、社会の自由は失われることになるのだ。それは法的規制だけでなく、自主規制であっても同じである。

「エロいのが不快」なら見なければ良いだけのこと。ことさら「政治的正しさ」を振りかざして自由な表現を封じる動きこそ、よほど警戒すべきではないだろうか。

本山貴春(もとやま・たかはる)独立社PR,LLC代表。北朝鮮に拉致された日本人を救出する福岡の会副代表。福岡市議選で日本初のネット選挙を敢行して話題になる。大手CATV、NPO、ITベンチャーなどを経て起業。

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