放送中の『民衆の敵』も話題! 政治がわかるテレビドラマ傑作5選

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衆議院選挙が終了した10月22日の翌日からフジテレビの「月9」(月曜9時のドラマ枠)で、新ドラマがスタートした。篠原涼子主演の『民衆の敵〜世の中、おかしくないですか!?〜』である。

実はこのドラマは10月16日からの放送が決まっていたが、急遽衆院が解散したため、一週間遅れての放送となった。「内容が選挙結果に影響する」という批判を避けるために、テレビ局が自主規制した形だ。

ところで、わが国において「政治」や「選挙」を題材にしたテレビドラマは非常に少ない。テレビ業界には「政治ドラマはヒットしない」というジンクスがあり、そもそも視聴者の関心が低いということもあるのかも知れない。

そこで今回は、これまで放送された政治ドラマの中で、筆者が特に面白いと思ったものを5作品紹介しよう。

『総理と呼ばないで』

1997年、フジテレビで放送。主演は田村正和。脚本を三谷幸喜が書いた、政治コメディである。

田村演じる「総理(固有名詞は出てこない)」は、世襲議員であり、密室談合によって内閣総理大臣に選ばれた。支持率も最低で、いつ退陣に追い込まれてもおかしくない。

史上最短任期の汚名だけは避けようと、官邸スタッフが奔走する。しかし本人には全くやる気も能力もなく、失敗を繰り返す。

しかし総理の仕事をこなすうちに、徐々に政治家としての自覚に目覚め、成長し、最終的には「政界の黒幕」に敢然と立ち向かう。

ちなみに舞台は日本ではない「架空の国」であり、日本に似ているが、違うのは軍隊を保有していることである。

某国から生きた蟹を送られ、実はそれはペットだったのだが、間違えて食べてしまい、「総理、戦争しますか。今なら勝てます」と側近が進言(?)するシーンがある。

『恋するトップレディ』

2002年、フジテレビで放送。主演は中谷美紀。

主人公は父親を市長にもつが、本人は勘当同然のフリーター。第一話では失業手当をもらいながら就職先を探す姿が描かれている。

そんな中、市長が急死。そこで、父親の後継候補として主人公の織原ちはる(25歳)が急浮上する。25歳というのは、市長選挙に立候補できる最低年齢である。

見事当選して市長になるものの、全く政治の知識がなく、自由奔放な性格も市長には向かない。周囲と様々なトラブルを引き起こしつつも、持ち前の正義感で徐々に政治家に目覚め、成長していくドラマだ。

主人公はあくまで20代の、ごく普通の独身女性。市長の仕事に向き合いながらも、ファッションや美容、恋愛にも忙しい。その当たり前の感覚を持ったまま、政治の世界に入っていくところが見所である。

『CHANGE(チェンジ)』

2008年、フジテレビで放送。主演はSMAPの木村拓哉で、「月9」枠だった。

主人公は衆院議員を父に持つが、本人は政治家が嫌いで、田舎の小学校教師をしている。そんな中、父親と、その後継者に決まっていた兄が事故で急死する。

補欠選挙には母親が出る筈だったが、夫と息子を同時に亡くしたことで傷心。渋々、主人公の朝倉啓太が教師を辞めて立候補する。選挙戦もまったくやる気がなかったが、ギリギリで勝利し衆議院議員になる。

ここからは通常では考えられない展開なのだが、35歳の一年生議員でありながら、政界のドンの思惑によって史上最年少の首相に選出されてしまう。いわばお飾りの、短期間限定の総理就任というわけだ。

しかし朝倉総理は曲がったことが大っ嫌い。どんな問題も他人任せにせず、自分で調べて、自分で判断しないと気が済まない。もともと政治に詳しくないため、毎晩徹夜の勢いで猛勉強する。

そのことで、徐々に政界のドンと対立するようになる。政治腐敗を知ることで、若い総理の正義感は燃え、最終的には大義を掲げて総選挙に打って出るのである。

『民王(たみおう)』

2015年、テレビ朝日で放送。遠藤憲一、菅田将暉のダブル主演。菅田は民放初主演だった。原作は半沢直樹シリーズでも有名な池井戸潤による小説。

遠藤演じる総理大臣・武藤泰山は堅物で、菅田演じる大学生の息子・武藤翔のいい加減な言動に不満を持っている。息子は息子でそんな父親が鬱陶しく、距離を置いて奔放に暮らしていた。

そんな二人がある日突然、入れ替わってしまう。

性格も考え方も正反対の父子。まして、翔はろくに漢字も読めない低偏差値学生である。総理としての演説に原稿を渡されるものの、読み間違いを頻発し、激しい批判を浴びる。このあたりは現実の麻生太郎元首相をモチーフにしている。

一方の泰山は息子に代わって就職活動に奔走するのだが、堅物な性格ゆえに面接先でトラブルを起こし、ことごとく失敗してしまう。

しかし立場が入れ替わったことで父子はお互いのことを徐々に理解し、協力し合うようになっていく。父は息子の視点で政治のあり方を見直すようになり、息子は全く興味のなかった政治に目覚めるようになっていく。

やがて二人は、自分たち(というか武藤政権)を追い落とす陰謀(つまり入れ替え)に気づき、巨悪に立ち向かう。

原作とテレビドラマでは設定や展開が異なる点も多々あり、比べてみると一層面白い。

『民衆の敵〜世の中、おかしくないですか!?〜』

2017年10月、フジテレビで放送開始。篠原涼子主演。記事執筆時点で第3話まで放送されている。

主人公の佐藤智子(40歳)は共働きの主婦で、保育園に通う子供を持つ。夫婦共々転職を繰り返しており、なかなか生活は楽にならない。子供にも良いものを食べさせることができないことで悩んでいる。

ある日、夫婦揃って仕事をクビになってしまう。そんな時、市議会議員の報酬が高額であり、普通に就職活動するよりも議員に当選する確率が高いことを知る。そして市議選の告示後であるにも関わらず、貯金をはたいて立候補する。

本人は投票にすら行ったことがないのだが、なんとかママ友を味方につけ、手作りの選挙戦を展開。次点で落選するのだが、最下位当選者が急病で当選辞退したため、繰り上げ当選、素人市議の誕生だ。

議員がどんな仕事をするのかも知らずに議員になってしまった主人公だが、持ち前の明るさと正義感で様々な問題に立ち向かう。

議会初日、議席で眠っていた先輩議員の頭を引っ叩き、その動画がインターネットに流出して炎上するシーンなど、いかにも現代風だ。

作中では最大会派の「議会のドン」と「市長派」が対立しており、多数派工作なども描かれる。市民にとって身近な政治がどのように動くのかを知る上では、うってつけの教材とも言える。今後の展開が楽しみだ。

まとめ

たまたま筆者が観た作品がそうなのかも知れないが、今回ピックアップした5作品のうち4作品がフジテレビ系列で制作・放送されている。

そして多くの場合、主人公はもともと政治素人で、政治にまったく興味がない。そして当然ながら、既存の政治体制には批判的に描かれている。

視聴者の多くは政治に関心がなく、体制側の既得権に浴していないという前提があり、視聴率を稼ぐためにも、そのような設定にする必要があるのだろう。その点は、「政治玄人(くろうと)」にしてみれば批判的に捉えざるを得ないかも知れない。

しかしこのようなテレビドラマを通じて、政治や選挙に関心のない人々が、政治を知り、興味を持つきっかけになるなら、とても良いことではないだろうか。今後も良作の政治ドラマが増えていくことを期待したい。

本山貴春(もとやま・たかはる)独立社PR,LLC代表。北朝鮮に拉致された日本人を救出する福岡の会副代表。福岡市議選で日本初のネット選挙を敢行して話題になる。大手CATV、NPO、ITベンチャーなどを経て起業。

本山貴春

(もとやま・たかはる)選報日本編集主幹。北朝鮮に拉致された日本人を救出する福岡の会事務局長。福岡大法学部卒(法学士)。CATV会社員を経て、平成23年に福岡市議選へ無所属で立候補するも落選(1,901票)。その際、日本初のネット選挙運動を展開して書類送検され、不起訴=無罪となった。平成29年、PR会社を起業設立。著作『日本独立論:われらはいかにして戦うべきか?』『恋闕のシンギュラリティ』『水戸黄門時空漫遊記』(いずれもAmazon kindle)。

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